見える化と言える化のためのアプローチ

中竹:枝廣さんがされていることってまさに、敵対していたり、噛み合わないもの同士をつなげていく作業ですよね。

枝廣:そうですね。たとえば経産省と環境省は噛み合わないことが多いんですが、会議とかで「こちら」と「あちら」に分かれて対面で話すので、そういうメンタルモデル、思い込みが強化されてしまう。

 そこで、「エコエコファンラン」という駅伝チームを数年前につくったんです。走者は必ず環境、経済、環境…というつながりになるようして、そして走り終わったらみんなでビールを飲む。これだけで関係性はがらっと変わるんですよね。

中竹:戦略的だなあ。

枝廣:ちなみに「エコエコ」はエコノミーとエコロジーなんですが、これだと経済と環境どちらを先に出すかでもめることもない(笑)。

中竹:参りました(笑)。僕が監督1年目のど素人だったとき、試合の映像を全コーチを集めて毎回見たんですね。ふつうはそれぞれのコーチが分析して寄せ集めるんですが、あえてみんなの前で自分が担当する分野のプレーを解説させたんです。

 すると、自分では当たり前だと思っていたことが、ほかの人にとっては「これって単に走っているだけじゃないんだ」とか新鮮な発見がある。そうやって試合をみんなで客観的に振り返ることで、一人ひとりの思い込みを弱めていって、全員で学習することを意識づけたんです。

枝廣:すばらしい。終わった試合を素材にしてみんなで考えることができる。考える場、言い合える場をつくるということですよね。

中竹:そうですね。さらにループ図みたいなものがあると、一緒に考えられて、言い合える。システム思考は、見える化と言える化のためのアプローチなんだなあ。

 今日はいろんな気づきをいただき、ありがとうございました。

枝廣:こちらこそ、とても楽しかったです。

 

【連載バックナンバー】
前編:エディ・ジョーンズはシステム思考家?