私は最初のうちイライラした。どうして予定通りにできないのか。何ひとつ決まっていないではないか。全員がお互いの時間を無駄にし合っている――。

 だが、そうこうするうちに、こうしたやり方の美点が見えてきた。会議が終わったとき、誰が何をすべきかを一覧にする必要がなかったのだ。ニティンはリシに連絡済みだったし、サプナーとラケシュは座席の問題をすでに解決していた。また、ヴァルンが次の火曜日の午後3時に都合がつくかどうか確認する必要もない。会議中にヴァルンを捕まえて、問題のあれこれをその場で解決していたからだ。

 予定の議題がすべて処理されたわけではなく、次回に先送りされた事項もあったが、それ以外の予期していなかった問題はその場で即座に解決された。その方法はまったく直線的ではないが、非常に効率的であることは明らかだった。

 その夜、ラケシュと夕食を共にした私は、スウェーデンでの列の例えを話してみた。ラケシュはこう説明してくれた。「インド人はもっと柔軟ですね。それはおそらく、通貨が安定しておらず、政府が思いつきでルールを変えてしまうような国で育ったからかもしれません。欧州や米国の人はもっと厳格ですよね。箱のフタを閉めるまで、次の箱のフタを開けないことが重要、だとか」

 インドだけではない。ほとんどの新興国市場や最近先進国となった市場では、直線的な計画よりも柔軟性が重視される。そしてそれは、完全に理にかなっている。物事が急速に変化している場所でビジネスパーソンが成功するためには、周囲の環境の変化に遅れず適応しなければならないからだ。

 私はその後、コーヒーを飲みながら、インドのある学生が話してくれたことを思い出した。インドで人々が行列をつくるときの「常緑樹」式のプロセスについてである。

 列をつくる必要があるときは、まず熱心な数人が木の「幹」(みき)を形成する。その幹が伸びすぎたと思える場合は、後からやってきた数人が、たとえば幹の5人目の隣から新たな列をつくる。そして後続の人に、自分たちの列に並んで「枝」をつくるよう暗黙のうちに促すのである。このプロセスが繰り返されると、人間の常緑樹ができあがる。幹をなす1列があり、その両側にわらわらと枝が連なっていくのだ。会議について私が用いた「行列の例え」は、どうやらインドでも使えるようだ。

 国際的に活動するビジネスパーソンは、どの文化が好みかを表明したり、物事のやり方が異文化では違うということに苛立ったりしても何の得にもならない。もちろん、自文化でのやり方が普通だと感じるのは自然なことである。しかしよく考えてみれば、どの文化的側面も場合によって有利にも不利にもなるとわかるはずだ。

 世界を股にかけて働くことの利点は、人々が物事をやり遂げるために、実に多様かつ大きく異なる方法を取っているという事実を目の当たりにできることだろう。


HBR.ORG原文:How Meetings Differ, from Stockholm to New Delhi September 28, 2015

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エリン・メイヤー(Erin Meyer)
INSEADの客員教授。異文化マネジメントに焦点を当てた組織行動学を専門とする。同校で企業幹部向けプログラムのディレクターを務める。