経営陣が取るべき対策

 アクティビストの接触を受けた経営陣が、彼らに戦略を変えさせることは通常不可能に近い。したがって経営陣は、最低でも次の2つの対策をできるだけ早急に講じなければならない。

 まず、会社の弱みがどこにあるかを特定するために、客観的評価を行う(感情が入り込むと実態が見えなくなることが多い)。前述してきたようなシナリオ分析をする時には、自社の具体的かつ根本的な現状を見据え、過去にアクティビストの介入を受けた企業と共通点がないかどうかも明らかにする。アクティビストが必要性を感じるのは、利回りの最大化なのか、合併なのか。資本構成の見直しか、あるいはスピンオフだろうか。

 経営陣はこの過程で、アクティビストが提案しそうな代替戦略が事業にプラスとなりうることを認める必要がある。シナリオの現実性に疑問を持つな、という意味ではない。しかし現株主が妥当と見なすかもしれないアクティビストの要求を、経営陣が自己防衛に走って無視したら、世間を騒がせることにもなる。前もって自社の弱みを検証しておけば、アクティビストの関与を受けても打撃を和らげることができる。もちろんアクティビストとの交渉は大変だろうが、お手上げということにはならないはずだ。

 次に、経営陣はシナリオに応じて、事前分析で見出した潜在的な弱みについて豊富な経験を持つ「アクティビスト対策チーム」をつくるべきだ。アクティビストは上級幹部、取締役会、大株主を「分断して攻略」しようとする傾向がある。したがって、チームの構成がきわめて重要となる。少なくともCEO、CFO、IR責任者、取締役、相談役を含むチームでなければならない。アクティビストが協力的であれ敵対的であれ、その接触を受けるという状況自体がストレスに満ちている。アクティビストの扇動に乗って意見の対立を見せれば、術中にはまるだけだ。

 経営陣が常に一丸となっていれば、アクティビストの最も有力な手段である「株主からの支持獲得」の効果を弱めることができる。アクティビストに介入されたら、勝者と敗者がはっきり分かれることは稀であり、通常は歩み寄りによる結果に落ち着くということに留意しておこう。準備万端でしっかりまとまったチームは、不意を突かれることがなく、譲歩する際にも株主への影響力を大きく損なわずに済む。

 アクティビストはターゲット企業に接触する前に、自分の戦略を現株主に提示して支持を得ようとすることで知られる。対策チームは株主に対して、経営陣の戦略をあらかじめ鮮明にしておけば、アクティビストの影響を軽減できるかもしれない。さらに、アクティビストの提案に伴うリスクとメリットを的確・公平に評価しながら、大株主とのコミュニケーションを続けることもできるだろう。

 人は誰しも、最も反発の少ない道を選ぼうとする普遍的な行動特性があるが、それはアクティビストもまた同じである。経営陣が準備を怠らず、事前にアクティビストの介入シナリオに沿って取り組んでいることが知られれば、企業は弱みにつけ込まれずに済むだろう。先を見据えて弱みに対処しておくことで、混乱と苛立ちが次々と生じがちなアクティビストとのやり取りを、コントロール可能で秩序立ったものにできる。場合によっては介入そのものを回避できるのである。


HBR.ORG原文:4 Types of Activist Investors and How to Spot Them October 07, 2015

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ダン・ロミート(Dan Romito)
ナスダック・アドバイザリー・サービスのシニアアナリスト。カーセージ大学の非常勤教授(ファイナンス担当)。北米、ヨーロッパ、アジアで企業のIR担当者やCFOに、資本配分戦略やアクティビスト投資家対策などのコンサルティングを提供する。