日本はグローバル・ビジネスリーダーを育てているか

 当研究室が2012~13年に行った大手日本企業へのアンケートと聞きとり調査(注1)(注2)によると、調査に協力してくれた34社が実施する74本のGBL育成プログラムの対象は、執行役員・本部長レベルが9.5%、部長レベルが27.0%、課長レベルが37.8%、主任・係長レベルが25.7%となっている。このデータから、課長や部長を対象とするプログラムが多い反面、次世代のGBL候補であるはずの主任・係長対象のプログラムは相対的に少ないことが分かる。このことから、急速に進むグローバル化の中、各社ともに第一線で活躍する既存の管理職にすぐにでもGBLとしての力を発揮してもらいたいという、プログラムの即効性に対する期待が感じられる。

 74本のプログラムの内、ほぼ半数のプログラムについては日本人だけに限らず、現地スタッフも対象となっている(表1)。海外のビジネススクールに送る場合を除き、これらのプログラムは日本で実施されるケースが多い。筆者の知る限り、10年前に日本企業で海外マネジャーを本社に呼んで、リーダーシップ研修に参加させた企業は殆どなく、技術者の技能研修くらいのものだった。海外マネジャーを対象にした本社主導のGBL育成は、この5〜6年間で本格化したトレンドであると考える。

 表1を見ると、傾向としては上位の管理職ほど日本人と外国人を混ぜたトレーニングが増える一方、下位の管理職層にいけばいくほど、日本人のみのプログラムが多くなっている。実際のプログラムの内容を見ても、下位の管理職では異文化対応力や語学力に焦点を当てたプログラムが多く、海外赴任経験者が少ない日本人係長、主任クラスに対してはGBLに育てる前の準備的なトレーニングを行なっている様子が伺える。

 一般的な開催頻度は年1、2回で、プログラム全体の開催日数は1年に10日間以内が過半数だが、33.8%のプログラムは11~20日間と研修としては長めである。執行役員・本部長クラス対象のプログラムでは、28.6%が2ヶ月を超えるプログラムとなっている。ヒアリングの結果、これらは海外のビジネススクールにおけるエグゼクティブプログラムへの参加であることがわかった。