日本企業の人気は高いのか
アジアの人材に対する日本企業の関心が高まる一方で、アジアの若者たちは日本企業をどのように思っているのだろうか。図表1に筆者の研究室とジョブストリートドットコム(アジア最大のオンライン・ジョブマッチングサイト)が2008年から2014年まで隔年で行った「出身地域別の企業人気度調査」の結果を示した。(対象は大卒以上、20−30代が8割以上、調査対象人数は毎回異なる。)
調査対象国の若者の間ではアメリカ企業の人気は根強い。インドネシアを除いた8カ国で1位のポジションを維持している。(インドネシアでは2012年より地元企業の人気がアメリカ企業を抜いて1位となった。)アメリカ企業が人気の背景には、各地でアメリカ企業が根付いて地元経済での存在感を高めていることや、製品やサービスが人々の生活にしっかり入り込んでいることがある。日常生活におけるアメリカ文化の影響に加え、アジア諸国における英語教育進展の成果として、若手エリートたちにとって英語のハードルが低くなっていることも要因の1つであろう。
アメリカ企業に次いで人気のあるのは、ヨーロッパ企業である。ネスレ、ユニリーバなどの消費財のメーカーに代表されるようにヨーロッパ企業の多くもアジアの人々の生活に深く入り込み、毎日のように消費される身近なブランドとして定着していることが人気を支えていると考えられる。
一方で、日本企業の人気は2008年以降、低下の傾向にある。グラフ上の破線で示した通り、働きたい人の割合が減少しているだけでなく、働きたくないと答えている人の割合が増加傾向にある点も問題だ。さらに分析を進めると、日本企業に勤めた経験がある人ほど、日本企業への勤務を望まない人の割合が増え、勤めた経験のない人に比べ4倍近く高くなるということがわかった。一度勤めた人の約15%が二度と勤めたくないと思うのである。この原因については後に考察する。