企業価値を最大化するための仕組みをどのように設計するのかが、コーポレート・ガバナンスを語る上で欠かせない。今回はその仕組みの中でカギを握る取締役会の改革について考える。

コーポレートガバナンス・コードの導入で変わる企業

写真を拡大
川本 裕子(かわもと・ゆうこ)
早稲田大学ビジネススクール教授。 東京大学文学部社会心理学科卒業。オックスフォード大学大学院開発経済学修士課程修了。東京銀行、マッキンゼー&カンパニー東京支社、パリ勤務等を経て現職。
現在、三菱UFJフィナンシャルグループ非執行取締役、東京海上HD社外監査役、トムソンロイタートラスティディレクターを兼務。これまでに金融審議会委員、金融庁顧問(金融タスクフォースメンバー)、内閣府統計委員会委員などの政府委員や、取引所・銀行・証券・製造業・IT企業・商社等の社外取締役を務めてきている。

 コーポレート・ガバナンスが議論される背景に、日本企業の長年にわたる業績の低迷と不祥事の発生、外から見た時にわかりにくさ(不透明さ)があること、企業統治の要のひとつは取締役会が適切に運営されること、現在の日本のコーポレートガバナンス・コードは、OECDコーポレートガバナンス原則を参考にして実現すべき普遍的な理念や目標を示した5原則を基本としていることなどを第1回で述べた。

 コーポレートガバナンス・コードは、株主の権利・平等性の確保、マルチステークホルダーとの適切な協働、透明性の確保、取締役会等の責務、株主との対話という基本5原則のもとに、30の原則があり、さらに38の補充原則をおいている。

 大きな話題となったのは、独立社外取締役を2名以上おくべき、取締役会は独立性判断基準を公表すべきということや、政策保有株式について、その保有の方針の開示や経済合理性の検証、議決権行使の基準開示といったことだ。

 金融庁と東京証券取引所によれば、コーポレートガバナンス・コードの導入を受け、2015年12月末までに、上場企業の約7割にあたる2,500社を超える上場会社が、同コードへの対応状況を公表した。対応の状況については、東証第一部・第二部で、約8割の会社が原則の9割以上をコンプライ(実施)しているという。

 取締役会については、2名以上の独立社外取締役の選任を行う上場会社が東証第一部全体の約半数に達し、監督機能の発揮を目指してモニタリング型に移行する例もある。ただし、取締役会の実効性の評価やスチュワードシップ・コードに基づく投資家と上場会社との対話の本格化はまだまだこれからのようである。