同質性の危険を乗り越える――村人と旅人の協働

 日本企業は従業員が極めて高い同質性を持っているのが特徴だ。終身雇用・年功序列の慣習があり、中途採用もこれまでは少なく、ウチソト意識も強くなる。労働市場の流動性が低いことも大きな背景だが、出世レースのゴールとしての「取締役」の位置づけがある。同質性が強いがゆえに、社外取締役に対しては大きな抵抗感がある、と言われる。活用しようとする発想が少なく、「社外取締役は役にたたない」という声も多い。社外取締役の適任者がいないという意見も良く聞かれるが、そもそも探す気がないのでは、とも感じる時もある。さもなければ、経営陣のネットワークの狭さを自己申告しているようなものだ。

 取締役ポストを「役員レースのゴール」「社長から任命された昇進ポスト」とする意識を捨て、取締役本来の役割を再認識しなければいけない。「同じ釜のメシを食った」人しか信頼できないメンタリティが問題になる。社内や業界の常識では限界があるので社外取締役を招聘しているはずで、「社外取締役は社内や業界を知らない」という不満はそもそも的外れだ。

 執行知識が不十分な取締役会が執行に過剰介入する危険はもちろんある。日本ではこの点が強調され、委員会設置会社で業績不振や不祥事があるたびに、「社外者に経営を頼るからだ」という論調が多くなるようだ。しかし本来、あるべき姿とは、CEOに執行権限を集中させ、独立取締役が多数を占める取締役会が監視に徹することだと思われる。

 常勤の執行陣(村人)の過度な同質性がもたらす弊害を乗り越えるために、独立取締役(旅人)を活用したガバナンスによってこそ企業価値が大きく向上する。日本の企業人はその確信を持つべきだろう。