社外取締役をどう選ぶか

 社外取締役がその機能を適切に果たすためには、会社の状況について、就任時から常にアップデートした情報が提供されている必要がある。取締役会への参加だけでなく、執行部や常勤の内部監査の担当者との面談、ビジネス現場の視察なども有益だ。

 社外取締役がCEOの選任に自信をもって対応できるようになるためには、そのビジネスを十分に理解し、候補者たちの資質を判断できるような環境が必要となる。おのずと社外取締役が会社に対して使うべき時間は長くなる。

 監督機能を果たすためには、「月1回2時間の取締役会の開催回数の75%に出席していればよい」というこれまでの「相場」は変わっていくだろう。(75%は、議決権行使会社が、その取締役への選任議案に反対しない出席率)

 すでに欧米では取締役の兼任が多すぎること(Over board)が問題とされている。日本でも取締役会への出席率のみならず、どのようにその取締役が貢献しているのか、取締役会評価や取締役評価で実態が示される時代になっていくと考えられる。社外取締役が増加するにつれ、そもそもどのような専門性を社外に期待するのかを明確化する必要も強まる。

 つまり、社外取締役もスペックが厳しく問われるようになる。CEO個人や執行部が選ぶのではなく、CEOを選ぶプロセスと同じように、指名委員会で複数の候補者の中から選んでいくことも自然な展開だ。現在はグループ系の会社の指定ポストになっている場合もあるが、個人の専門性や特性を見ての依頼になっていくだろう。

 社外取締役としての適性をどう見抜くのか、という点も課題だ。胆力があり独立性を保てる人なのか、会社とのフィットはどうか、という評価を顧問などの役割を依頼して、確認している会社もあるし、たとえば政府や経済団体の委員会で一緒に仕事をした経験なども有力材料になる。そういう評価ができるよう、執行側も幅広いネットワークを持っている必要もある。またその面で社外取締役を活用するという手もある。

 社外取締役と言えば会長・社長経験者を望む声もあるが、肩書を重視しても実質面では期待外れになる可能性もある。オープン、自由闊達な企業であれば執行役員経験者でもきちんと意見が表明できて、ひとつの部署を統括していれば全体感をもった運営経験がある。しかし、旧式な企業では会長といえどもイエスマンにすぎないかもしれない。「厳しいことも言ってもらい、自社を少しでもよくしたい」ことを望むのであれば、要は人物次第である。権威づけだけの社外役員はかえって有害だろう。

「社外取締役にしてやっている」でも「なってもらっている」でもない、企業価値にとって有効なボイスになる、そういった機能的な関係をいかに築けるかが大切だ。