以上で述べてきた取り組みに投資することで、マネジャーはどのようなリターンを見込めるだろうか。
たとえば医療保険会社エトナでは、社内のマインドフルネス・プログラムに1万2000人を超える従業員が参加。その成果として、生産性が週当たり平均62分改善し、従業員1人当たり年間3000ドル相当の節約につながった(英語記事)。
より一般的には、英コンサルティング会社アイオープナー・インスティテュート(iOpener Institute)の調査結果がある。中規模の会社では、職場の幸福度が向上すると、離職率が46%減少し、病欠によるコストは19%減少、パフォーマンスと生産性は12%上昇したという。さらに、最も幸福を感じている従業員は他の同僚と比較して、タスクに集中している時間が46%多く、活力の度合いは65%高かった。
最後に、よりマクロなレベルでは、人材コンサルティング会社タワーズ・ワトソンの調査結果がある。従業員が持続的なエンゲージメント――組織に対する感情的な絆、および仕事で権限と活力を与えられているという感覚――を持っている企業は、エンゲージメントのレベルが平均か低い企業に比べ、利益は2倍、粗利益は約3倍高かったという(英語記事)。
あなたはこう自問するかもしれない。「部下の再起力を重点的に支援すること、マインドフルネスの実践を後押しすることが、本当にマネジャーとしての自分の仕事だろうか?」と。
先述したギャラップの調査では、「従業員は私生活を職場に持ち込むべきでない」という見解は、「もっともに聞こえるかもしれないが、まったく非現実的である」としている。同社の分析が明らかにしているのは、「私たちの心身の健康は、ともに働く人々にも、私たちのために働いてくれる人々にも、影響を与える」ということだ。したがってマネジャーは、センター・フォー・パーソナル・グロースの創設者モニカ・ブロッカーが言う「精神力と情緒的能力のアップグレード」を、本当に重視する必要があるのだ。
自己開発は個々人とチーム全体をよりよい状態に変え、高いパフォーマンスとエンゲージメントを長期的に実現する。これがマネジャーに示したい結論だ。高い業務成果と、従業員の心身の健康を両立させることは、単に可能なのではない。高パフォーマンスのチームをつくる基盤として必須なのである。
HBR.ORG原文:Help Your Team Manage Stress, Anxiety, and Burnout January 21, 2016
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リッチ・フェルナンデス(Rich Fernandez)
幸福な働き方の促進を支援するウィズダム・ラボの共同創設者。個人と組織の再起力、マインドフルネス、思いやりに関する思想的リーダーとして、講演・執筆活動に取り組む。以前はグーグルで幹部育成部門のリーダーを務めたほか、イーベイやJPモルガン・チェースなど多数の企業に革新的な人材育成ソリューションを提供してきた。