ニューイングランド・ペイトリオッツは、2000年以降12度の地区優勝と4度のスーパーボウル制覇を成し遂げ、NFL史上最強豪チームの1つともされる。その長期にわたる成功の秘訣を、ゴビンダラジャンが独自の視点から読み解く。


 私はこの35年間、企業を支援するなかで「スリーボックス・ソリューション」という枠組みを活用してきた。

ボックス1:現在のパフォーマンスを維持する(中核事業の強化)
ボックス2:過去を選択的に忘れる
ボックス3:未来を創造する(新たなビジネスモデルの創出)

 これらを統合的に行うのがスリーボックス・ソリューションであり、イノベーションと戦略に関する私の思考と指導の基盤となっている。

 ほとんどの組織は、現在の事業を健全に保つことばかりに重点を置く(ボックス1)。もはや役に立たないツールや方針を捨て去ること(ボックス2)、そして将来に向けてイノベーションを進めること(ボックス3)は後回しになっているのだ。したがって、この枠組みについて論じる際に、私は往々にしてボックス2と3の取り組みを特に強調することになる。実際、将来の事業を創造するためには2と3が非常に重要だ。

 とはいえ、ボックス3での創造を可能にして支えるうえで、業績の原動力となるボックス1は重要な役割を果たすのも事実だ。そしてボックス1のあり方について模範的な例を示しているのが、米ナショナル・フットボール・リーグ(NFL)のニューイングランド・ペイトリオッツである。

 NFL内部の仕組みは、ニューイングランド・ペイトリオッツのように勝ち続けるチームが出るのを防ぐようになっている。しかし2000年から2015年にかけて、ペイトリオッツは驚くほどの成功を収めてきた。16年間で12回の地区優勝を果たし、スーパーボウル(NFLの優勝決定戦)には6回出場し、うち4回王者に輝いている。

 これほどの成績が続くことは、通常ならば考えにくい。NFLは、いわゆる「戦力の均衡」を図るために、さまざまな仕組みを通じて介入しているからである。

 大学選手を獲得する年次ドラフト会議もその一環だ(NFLはドラフト制度を導入した初のスポーツリーグ)。年俸の上限を厳格に定めて、富裕な強豪による金満補強で貧しいチームが圧倒されるのを防いでいる。また対戦スケジュールを工夫して、弱いチームが同等の相手と当たりやすいようにもしている。そして競技委員会は、一部の強豪チームにとって最大の強みであったプレースタイルのいくつかを禁止して、15ヤードの罰則にするような権限を持つ。

 こうした均衡策を通じて、弱いチームは次第に有利となり、強いチームは衰えていく。理論上は、大勝利も屈辱的な敗北も、NFL32チームの間でできる限り民主的に分配されることになる。

 だが時として、再分配主義を強いるNFLの尽力を打ち破る、ペイトリオッツのようなチームが現れる。一体どのように、それを成し遂げているのだろうか。