このように、権限委譲のプロセスに1つでも欠陥があるだけで、いともたやすく過剰管理が生じてしまう。したがって、適切な条件を整えることが重要である。

 まず必要なのは、移譲を偽りにしないことだ。人に任せるつもりがなければ、相手にオーナーだと誤解させてはならない。みずからが本当のオーナーならば、そのように伝えよう。チームメンバーの役割は自分を支援することだと明示し、どんな助けが必要かを説明するのだ。

 スポンサーの役を担うならば、オーナーと関わる際に自身の立場を明らかにしよう。要件を明確にしたいのか、進捗を検証したいのか、フィードバックを与えたいのか、ただブレーンストーミングをしたいのかを、相手に伝えるのだ。

 アドバイスは慎重に行おう。もちろん提案もすべきだ。しかし、その提案を採用するか否か、それをどのように実行するかについては、オーナーに判断させる。

 また、スポンサーは当然ながら、経験や人脈、信用などを生かして仕事を部分的に後押しすることで、「現場」に貢献できるだろう。ただし現場に立ち入る際には、チームを率いるオーナーに対して説明責任を負う必要がある。

 この「スポンサー、オーナー、要件」という基本概念を用いれば、最善策がわからない時に、合理的かつ効果的な選択ができるようになる。その意味では、ホラクラシーのような自主管理型の組織の方法論とよく似ている。スポンサーとオーナーというヒエラルキーに基づく関係を自主管理と並列に比べるのは、奇異に映るかもしれない。しかしどちらのマネジメント方法でも、創造性と生産性の発揮に必要な自主性をもたらすのだ。

 ホラクラシー型組織では構造上、過剰管理が禁じられている(従来型の組織でも過剰管理はまったく望ましくないが)。とはいえ、組織構造を変えるだけで、難題に対処し大きな目標を達成するために必要な組織能力を確立できるわけではない。マネジャーはいかなる組織構造・階層にあろうと、オーナーシップの促進と過剰管理との狭間で日々選択を迫られる。常に正しいほうを選ぶスキルを身につければ、マネジャーとして力を発揮できるのだ。


HBR.ORG原文:Why Is Micromanagement So Infectious? August 17, 2016

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ニコ・キャナー(Niko Canner)
インカンデセント(コンサルティング会社)の創業者。

 
 

イーサン・バーンスタイン(Ethan Bernstein)
ハーバード・ビジネススクール助教。リーダーシップと組織行動論を担当。