働く時間に関係なく、
生産性が同じ人を同じ評価に
――管理職は、短い時間で仕事を終える人よりも、夜遅くまで一生懸命働く人を褒めてしまう傾向もあります。
ほんとに罪深い傾向だと思います。ただこれは職場の管理職だけでなく、学校教育から持ち越されている価値観だと思います。親も子供が長い時間、机に向かっていたら喜ぶでしょ?
本当は短い時間で高い成績を取ることのほうが推奨されるべきなんですが、どうしても「長い時間、机の前に座っている子」を「よく勉強する良い子」だと褒めてしまいます。それが職場でも続いていて、みんな「長く机の前に座っていて、一心不乱に手を動かしている人」を評価しがちです。
――学校からして生産性の概念がないということですね。
3時間勉強して80点を取っている子に、「1時間の勉強で同じ点数がとれる革新的な勉強方法がないか、考えてみなさい」と言ったりしませんよね。ほとんどの人が、勉強時間を倍の6時間にしたら100点がとれるんじゃないか、と考えてしまう。でもこの方向だと、最終的には24時間まで勉強時間を延ばし続けることになる。
子供の頃に一定の忍耐力を付けることは必要ですが、忍耐力だけでなく、生産性の上げ方も身に付けたほうがいいと思います。
――評価の方法を変えないと、その辺の意識は変わらないかもしれません。
業務時間が短いのに成果が高い人をもっと褒めたほうがいいと思います。当たり前ですが、仕事の成果が同じなら、毎日15時間働いている人より、5時間しか働いていない人の方を評価すべきです。そして、この二人の給与は同じにしなくちゃいけない。それが同一労働同一賃金ということです。
ややこしいのは、5時間で80の成果を出している人と、15時間の労働で90の成果を出している人がいる時です。ここで成果の絶対値だけを比べて、90の成果を出しているほうが80より高いからと評価してしまうと、事実上、「生産性は低いけれど、長く働いている人を高く評価する」という組織になってしまいます。
そして、そういう人が先に昇格するような組織では、事実上、長時間労働が推奨されているということになります。当然、みんな「自分もいくらでも働いて、少しでも成果を上げよう」と考えてしまうでしょう。
――なるほど、そうなるといわずもがなですが、残業代がつくという制度がややこしいですね。
飲食店のサービススタッフであったり、配送ドライバーであったり、そういう人が残業をしたら、きちんと残業代を払うべきです。通常より高い割り増し賃金を払うのも当然だし、インターバル規制(前日の仕事が終わった後、翌日の仕事を開始するまでに最低限、開けなければならない時間の間隔を決める労働ルール)の導入も必要かもしれません。
問題は、時間で管理されるべきでない職務にも残業代制度が適用されていることです。中には「残業は月に20時間まで」などと決めている企業もあるようですが、そんなことをするくらいなら最初から20時間分、基本給を上げたほうがいいと思います。