サマリー：近年話題の「リバース・イノベーション」は、単に新興国市場向けに設計された製品を取り上げ、それを先進国で売ることに留まらない。むしろ、企業そのものを変革するものである。それゆえ、実行に当たっては、内部か... もっと見るらの軋轢も多い。世界的オーディオ・メーカー、ハーマンは、大胆かつ慎重に事を進めた成功事例である。新興国市場を熟知した現地リーダーに大きな権限を与える一方、その先進的な試みを全社でサポートできるようトップは細心の注意を払っている。そうしたマネジメントの妙があったからこそ、ハイエンド顧客への対応に匹敵する情熱を持って、インド、中国、東南アジアをはじめとするローエンドへの道を切り開くことが可能となった。リバース・イノベーションには、従来のグローカリゼーションとまったく異なる発想とマネジメントが必要である。 閉じる
多国籍企業が新興国市場でイノベーションを成功させる方法を学び、それらの知識、そしてイノベーション自体を先進国市場に輸出すれば、新しいビジネスの可能性が花開く。従前の業務という足かせを外し、自社製品すべてを見直し、成長を求めて新たな市場に打って出られるようになる。
しかし残念ながら、このような「再生」を経験する企業はほとんどない。なぜなら、リバース・イノベーション──新興国市場でアイデアを生み出し、欧米市場に巧みに持ち込む──は、途方もない困難を伴うからだ。
たとえば、社内の支配的論理、つまり「会社の行動を導く制度化された思考」を克服しなければならないが、これには通常、大きな変革が必要となる。古い組織構造を捨て去って一から新たにつくり上げる、製品の開発・製造の方法を刷新する、販売部隊を再教育するなどである。
低予算イノベーションのすすめ
イノベーションというと、何もかも新しく開発しなければ、と気負ってしまいがちだが、必ずしもそうではない。過去の企画や既存商品のなかにも、見過ごされてきた萌芽がある。環境や顧客ニーズは常に変化するものであ... もっと見るり、それゆえ、過去と異なる視点であらためて評価し直すことで、十分に新たなソリューションが生まれるのだ。本稿では、それら自社内にすでに存在する「掌中のイノベーション」を体系的に探すための6つの方法を提示する。レインバード、リョービ、マイクロソフトなどの成功事例が物語るように、過去の蓄積の棚卸しによるイノベーションは、一から開発するよりも低リスクであり、しかも、資源やコストを抑えつつ、迅速に新製品を市場に投入できる。予算上の制約が厳しいこの時代にこそ試すべき方法である。 閉じる
