DHBRおススメ経営書でも紹介したマネジャーの最も大切な仕事――95%の人が見過ごす「小さな進捗」の力。マネジメントの考え方に新しい枠組みを提示した本書の監訳者の中竹竜二氏が、親交の深い予防医学者の石川善樹氏と対談。スポーツと医学。異なるバックグランドを持つ2人が、仕事の本質について語り合う。(撮影:和田剛、構成:山下智也、場所:EIJI PRESS Lab)

キャラクターを磨くと、アウトプットが変わる

石川善樹(以下、石川):マネジャーの最も大切な仕事』は、本質的でおもしろかったです! 対談をはじめるにあたって、自分なりにちょっと全体像を整理してもいいですか?

中竹竜二(以下、中竹):はい、お願いします。

石川:まず、仕事ってシンプルに考えると、「インプット」「プロセス」「アウトプット」の3つの要素があると思うんです。例えば、人と話したり情報収集したりするのがインプット。物事を考えるのがプロセス。何らか成果をあげるのがアウトプット。これは僕のような研究者に限らず、ビジネスの世界でも共通していると思います。

 そしてごく一般的なアプローチとして、僕たちはアウトプットから逆算してプロセスやインプットを設計しますが、これはとても理性的な営み(ロジカル)なので、うまくいっていても、いずれ考え尽くして行き詰まってしまう。

中竹:行き詰まるとインプット、プロセス、アウトプットのサイクルが停滞して仕事が進捗しなくなる。すると、モチベーションも成果も落ちる。

石川:そう。だから、イノベーションが必要になる。じゃあどうすればいいか。こういうときは、ロジカルに考えるだけでなく、クリエイティビティが重要です。そしてイノベーションによって何かが変わることへの抵抗をなくすことも不可欠。

中竹:つまり発想を豊かにして、新しいことにチャレンジできるようにする、ということですね。

石川:そうです。ここで登場するのが、「キャラクター」という第4の要素。ジム・レーヤーというスポーツ心理学の権威が提唱した概念なのですが、これは、自分はどうありたいか、組織や社会に対してどう貢献したいかを意味します。

 こういう自分や他者を認識する脳の部位を「内側前頭前皮質(mPFC)」と言うんですが、ここが活性化すると、理性が下がってクリエイティビティが高まり、さらに変化への抵抗が弱まるんです。

中竹:なるほど。このmPFCが活性化すると、イノベーションが起きやすくする。

石川:そういうことです。このことに一番熱心なのが、シリコンバレーのエグゼクティブたちです。彼らはアウトプットから逆算するビジネスは、もう限界だと思っています。だから、マインドフルネスや禅を学びにわざわざ京都に行く。世の中は何に困っているんだろう、自分はどんな貢献をしたいんだろうと、思いやりをもって自分や他者を認識することでキャラクターを磨き、アウトプットを生み出そうとしている。そのために、京都の禅師に会いに行く。