作業をこなすことは仕事ではない

高岡:弊社は神戸が本社ですので、東京へ出張する社員も多いのですが、近年はインバウンド(訪日外国人客)が増えて、ホテル代が値上がりしており、会社で決められた宿泊費の上限ではホテルの予約が困難な状況でした。

「それでは社員がかわいそうだから、なんとかしなさい」と人事部に言ったら、「社長、経費が上がってもいいんですか」と。「上がるのはだめだ。むしろ、下げることを考えなさい」と指示したんです。

 結局、私の発案もあって宿泊費の上限をなくしました。その代わり、部署ごとの出張経費予算は守ることを徹底しました。そうなると、出張回数を減らすしかない。その結果、それまで出張経費を1%、2%減らすのに苦労していたのが、一気に8%も減りました。

 この話には伏線があって、実は私が社長になってから、会議のために出張をしなくても済むように、テレビ会議やスカイプ会議を積極的に導入していたのですが、実は出張回数があまり減っていなかった。

 そこで、宿泊費の上限はなくすが経費予算は守るというルールにしたら、出張をせずにテレビ会議やスカイプ会議で済ませるようになって、出張回数が減ったんです。

伊賀:おもしろいです(笑)。というか、社長がそこまで指示されるなんて頭が下がります。ただ本当はそこまで社長に言われなくても、社員が自ら考え始める組織になるのが理想ですよね。

 それを促進する一つの方法が、年末のレビューで「今年、あなたは去年から仕事のやり方をどう変えたのか?」と問うことであり、「来年は何をどう変えたいと思っているか?」と尋ねることだと思うんです。

 すると「去年も今年も同じように同じ仕事を頑張りました」ではすまなくなる。変えるべきことを探すには仮説立案や分析も必要になるし、実行には他部署の巻き込みも必要になる。するとリーダーシップが問われる。

 反対に何も変えず、去年までと同じように忙しく手を動かしているだけでは、考えることもリーダーシップも求められません。

高岡:やり慣れた仕事、つまり作業をこなすことが仕事だと思い込んでいるから、新しいことをやらない、今までのやり方を変えようとしない。だから、組織として働き方を変えるには、仕事とは何かという定義付けが、本当に大事だと思います。