BMWのような自動車メーカーには、他の可能性もある。ユーザーデータ、ソフトウェアのアップグレード、そしてデジタルのビジネスモデルを組み合わせて、顧客に未経験の新機能を試してみるよう間接的に促すことだ。
たとえば、あなたが近々コート・ダジュールへの旅行を計画していること、そして現地のスピード制限は時速130キロであることを、コネクテッド・ドライブのアプリが知っていると想定しよう。そして、一時的にエンジンのアップグレードを無線で実行したいかどうか、あなたの意向を確認する性能が車そのものに備わっているとしたらどうだろう。自動車メーカーはさらに、「休暇セット」と称して、エンジンのアップグレードに加え、交通、天気、イベントなどの情報を旅行期間中に限って提供してもよい。
テスラはいまや、モデルS向けに、車の加速時間を10%短縮できる「ルーディクラスモード」へのアップグレードを無線経由で提供している。古いテスラ車を売らなくても、バージョンアップできるわけだ。ただし、アップグレードは購入(およそ1万ドル)しなければならない。少なくとも技術的には、追加パワーのレンタルは実現可能なはずなのだが。
車や家電といったモノの製造企業は明らかに、デジタルとの融合が次のフロンティアであることを理解している。しかし、それが可能にしうるビジネスモデルについて、深く創造的な考察をしていないことが多い。物的資産そのものは、デジタル戦略の第一歩にすぎないのだ。
HBR.ORG原文:Why Aren’t Automakers Embracing Digital Business Models? December 30, 2016
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アンドリュー・シピロフ(Andrew Shipilov)
INSEAD教授。戦略を担当。同校のアクゾノーベル記念フェロー。共著にNetwork Advantage: How to Unlock Value From Your Alliances and Partnershipsがある。