●人生のこの時点で、仕事から得たいものを評価する

 誰もがバリバリ仕事をするキャリアを望んでいるわけではない。実際、イェール大学スクール・オブ・マネジメント教授のエイミー・リゼスニュースキの研究によれば、人には次の3つのタイプがあるという。 

(1)仕事をキャリアと考えるタイプ 
(2)仕事を単なる仕事と考えるタイプ 
(3)仕事を天職と考えるタイプ 

 おそらく驚くことではないだろうが、相対的に高いパフォーマンスを見せ、仕事により大きな満足感を抱いているのは、(3)のタイプだ。

 ここでカギとなるのは、あなたがいま、大事に思っている対象を見極めることである。あなたの原動力になっているのは何か、何に夢中になっているか、何によって心底やる気になるか。そして、そこから再設計するのだ。20代の頃に仕事の原動力になっていたものが、もはや魅力的でない可能性は十分にある。40代、50代、あるいは60代の自分自身を、20代の頃の熱意に無理やり押し込めてはいけない。

 そうすれば、たとえ真の天職が見つからない場合でも、少なくとも有意義な仕事経験を見つける確率は高まるはずだ。

 ●「ジョブ・クラフティング」できる部分があるかどうか検討する 

 現在の職務に工夫を凝らすジョブ・クラフティングという発想、具体的には職務の一部を微調整して、より大きな意義と満足感を得ることについては、相当の研究がこれまでに成されている。組織行動学者のジャスティン・バーグ、ジェーン・ダットンおよびエイミー・リゼスニュースキの研究結果によれば、豊かな想像力を効果的に発揮して、仕事を個人的に有意義なかたちに再設計することが可能だという。

 たとえば、分析することは楽しめても販売は好きになれない、という人の場合、分析に重きを置く職務に調整できないか。他人と協力して行動するのは大好きだが、いまは孤独を感じている場合は、プロジェクトにより多く関わる方法を見つけられないか。

 前述のバーグ、ダットンおよびリゼスニュースキの研究に参加した1人は、マーケティング職を設計し直し、元々は職務の一部ですらなかったイベント企画により関与できるようにした。その理由は単純で、イベント企画が好きで、かつ得意だったからだ。その結果、会社に付加価値をもたらし、自分自身の仕事経験にも付加価値を与えることができた。

 あるいは、こんな方法も検討するといい。自分が職務設計士であると想定して、自身の職責について「ビフォー」と「アフター」を描いてみるのだ。ここでの「ビフォー」はパッとしない現状を表し、「アフター」は将来の可能性を表している。何か新しい手を少し加えることで、職務を再設計できないか。たとえわずかでも、ときには、最小限の調整をするだけでも、仕事経験が質的に有意義に変化する可能性がある。

 ●仕事以外の分野で情熱に火をつける

 情熱を燃やす対象は、「時間がないから」とみずからに言い聞かせて諦めてきた潜在的な趣味とか、職務やキャリアとは無関係の個人的なプロジェクト、あるいは、革新的なアイデアや起業家的なアイデアを比較的小規模で実験できる場の「副業」であるかもしれない。

 仕事以外に情熱を注げる対象があれば、9時から17時までの日常業務の単調さを埋め合わせることができる。このように自分の気持ちを前向きにする努力、予想外のプラス効果を仕事にまでもたらす可能性もある。エネルギーとインスピレーションが仕事の外で得られた結果、仕事のうえでも工夫を凝らしたり、仕事の一部で実際にはいまも好きな職務に、あらためて打ち込んだりすることができるようになる。

 ●それでもうまくいかなければ、思い切って変える 

 家の住み替えを検討するように、キャリアの変更を検討してみよう。家を初めて購入した時、満たされるべき要件があったはずだ。だがそれ以来、優先事項が変化したかもしれない。あるいは、単にその家に収まり切れなくなった場合もあるだろう。

 さて、引っ越すか、改修するか、それとも現状のままでいるか。職務とキャリアについても、これとまったく同じように考えられる。優先事項とニーズが変わったのではないか。職務を微調整あるいは“リノベーション”することは可能か。それとも、踏ん切りをつけて次に進む必要があるか。

 言うまでもなく、転職を選択する場合は、思い切って実行する前に、じっくりと考えて準備するといい。その場合は、興味のある職種に従事している人たちと情報交換を行い、財源を整え、そして新たなキャリアを(週末とか夜間とかに)試してみればいい。すべてを一気に変更することに怖気づく場合もあるだろう。だが、仕事に心底不満を感じているのであれば、この選択肢を検討することが重要だ。

 ただし、最も重要なことは、仕事への興味が薄れていることに気づき始めたときでも、希望を失わないことだ。情熱を再燃させるための方法、あるいは、少なくとも絶望感に陥らないように若干の変更を加える方法は、必ず見つけられる。キャリア・リノベーションという道を歩むうちに、自分自身のレジリエンス(回復力)と才覚の豊かさに気づいて驚くはずだ。


HBR.ORG原文:What to Do When Your Heart Isn’t in Your Work Anymore, July 10, 2017.

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アンドリュー・L・モリンスキー(Andy Molinsky)
ブランダイス大学インターナショナル・ビジネススクールの教授。担当は組織行動学。近著にReach: A New Strategy to Help You Step Outside Your Comfort Zone, Rise to the Challenge, and Build Confidenceがある。詳細はウェブサイト(http://www.andymolinsky.com/)で閲覧できる。また、ツイッター(@andymolinsky)でも発信している。