●状況3:極めて重要な状況で、信頼していた同僚が、あなたに怒りをぶちまける

「マヌエルとアルビンは在宅でウェブサイトを運営している。マヌエルがコンテンツを書き、アルビンはデザインとフォーマットを担当している。アルビンの作業のほうが往々にして長い時間を要することに、マヌエルは気づく。感謝の気持ちから、彼は頻繁にアルビンにランチをごちそうし、慢性腰痛を和らげるようにカイロプラクティック治療を時折プレゼントし、時にはアルビンのワードローブに新たな1枚を加えて彼を驚かせる。
 ある日、アルビンがマヌエルに近づき、思い切って転職したいと告げる。マヌエルは何も言わない。アルビンは無視されたと感じ、転職の話を繰り返して告げた後、『この件について、君には何も言うことがないのか』と尋ねる。マヌエルは冷淡にこう吐き捨てる。『何についてさ』
 アルビンは、マヌエルの無関心と思いやりの欠如を目の当たりにして、見下されたように感じる。また、マヌエルは感謝の気持ちを事あるごとに行為で示しているにもかかわらず、マヌエルが得意先に示す関心の強さ、敬意、反応の速さに比べれば、自分は貧乏くじを引かされているように度々感じている。アルビンがそのことに言及すると、マヌエルは突然こう反撃する。『君のために僕がどれほどのことをしているか、考えてみろ!』」

言うべきフレーズ:「君が僕のためにしてくれたことを問題にしているんじゃない。僕に対してしたことについて話しているんだ」

 大切な同僚、ほぼいつも適切に対応してくれる相手が、あなたとのよい関係をぶち壊した瞬間を、あなたもおそらく経験済みだろう。そのことを言及しようとして相手から反発され、嫌味を言われると、フラストレーションが生まれる。相手の言い分はもっともかもしれないが、無礼にふるまっていいというわけではない。

なぜ効果があるのか:高ぶったりせずに上記のフレーズを言えば、以下の理由でフラストレーションをすばやく軽減できる。

・会話の範囲を単発の過失に限定し、互いを思いやってきた過去の話にまで広げないようにする。
・事実に基づき、原因と結果を明確にした話し合いを即座にする。
・今後、互いに認め合う行動を取れるような状況を確保する。

「アルビンは深く息を吸った。『いまは、君が僕のためにしてくれたことを問題にしているんじゃない。僕に対してしたことについて話しているんだ』 。続いて、彼の仕事をマヌエルが評価してくれていることを認めたうえで、マヌエルが転職について何も反応しなかった事実に言及した。マヌエルはアルビンが彼のところに話に来たときに、あまり気遣わず、思いやりを示さなかったことにアルビンが傷ついていると気づき、謝罪した」

●状況4:「ノー」と言わなければならない

「日曜日の夜9時、サムはジュリアにメールを送る。顧客サービスの電話待ち時間に関して、会社を優位に立たせるかもしれないアイデアが書かれている。ジュリアはサムとこれまで以上に協働するように頼まれている。だがサムを信頼できないので、彼女はそうすることを避けてきた」

言うべきフレーズ:「これはよい出発点ね」

 どんな時も「ノー」と言うのは難しい。よく働き、かつチーム・プレイヤーであることを行動で示そうと努力している場合は、特に断りにくい。「イエス」と応じて相手を黙らせたり、正しい見方を示唆したり、相手の言うとおりに事をさっさと済ませたりするほうが容易なように思える。

なぜ効果があるのか:熱意と柔軟性を感じさせる口調で、この前向きなフレーズを使えば、以下の理由で、当初の依頼を辞退できると同時に、あなたの評判も守られる。

・相手のアイデアが出発点であると再定義する。
・コミットすることなく、依頼を検討することが可能になる。
・依頼内容を練る選択肢を生み出す。
・外交術を使い、拒絶しない。

「ジュリアはサムにこう返信した。『これはよい出発点ね!チームメンバーを集めてデータを準備し、それから電話待ち時間にどのように対処できるかアイデアをまとめて、あなたに連絡するわ』」