●重要なコントラクター
インディペンデント・コントラクターは、至る所で見られるようになってきている。
マッキンゼー・グローバル・インスティテュートによれば、米国と欧州連合の労働者のうち、約20~30%は組織に所属していない。マッキンゼーの研究によると、これら1億6200万人のうち約30%は、必要に迫られてではなく、みずから選択してフリーエージェントとなっている。事実、全米経済研究所(NBER)による別の研究によれば、2005年から2015年の間、米国における正味新規雇用の94%はフリーランス労働によるものだという。
これらのデータから言えるのは、インディペンデント・コントラクターは定着しつつあるということだ。
エコラボの例を考えてみよう。同社は、人と重要な資源を守る水や衛生、エネルギー関連の技術とサービスを提供する、130億ドルのグローバル企業だ。
エコラボの従業員4万8000人のうち約6000人は、一時的なコントラクターである。同社の最も重要なコントラクターの中には、てんさいとてんさい糖の精製方法などの、重要な分野における貴重で深い専門知識を有する人もいる。
「てんさいの専門家は世界で数少なく、その中の1人が、我が社でコントラクターという立場で働いています」と、エコラボの人材担当エグゼクティブ・バイス・プレジデント、ローリー・マーシュは述べている。「彼は退職後、フルタイム勤務を望まなかったのです。彼がスタンバイし、我々のチームにいてくれることに感謝しています」
このような重要なコントラクターを留めておくために、エコラボは、「仕事をするのに最高の資材一式」を提供しているとマーシュは言う。「私たちは相当の時間を費やして、彼らが最新の技術と最高の研究施設を使えるようにしています」
どの優秀な従業員にとってもそうであるように、報酬はきわめて重要だ。また、能力開発、特に自己ブランドの開発も重要である。これはつまり、社内でキャリアパスを提供することではなく、重要なコントラクターが、業界でみずからの信用をさらに高められるよう手助けすることを意味する。
重要なコントラクターにとって、組織の評判は重要だ。単刀直入にいえば、彼らは勝者と一緒に仕事をするのを望む。強いブランド力を誇る企業は、重要なコントラクターを惹きつけるうえで優位に立っている。反対に、ブランド力が弱い企業は、コントラクターが新人で強力な自己ブランドをまだ構築していない場合を除けば、最高の人材を得るのに苦労する。
核となる専門家と顧客体験のクリエイター、そして重要なコントラクターに、会社のために働いてもらい、会社に留まってもらうための第一歩は、上級幹部だけが社内で最も価値ある人材ではないと認識することから始まる。
多くの企業は、従業員維持戦略を経営幹部や幹部候補に対してのみ実施している。だが、その他のカギを握る重要な役割、それこそが競争優位を牽引する役割を軽視すれば、貴重な人材を社に留めておくことはできない。
どの役割が市場パフォーマンスに最も影響を及ぼすか見極め、その地位にこそ、優秀な働き手を配置しよう。
HBR.ORG原文:The 3 Essential Jobs That Most Retention Programs Ignore, January 05, 2018.
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