より公平になれるだろうか

 我々の調査でわかったのは、男性も女性も、報われない仕事を本当は引き受けたくないと思っているにもかかわらず、男性よりも女性のほうが志願することが多く、志願するよう頼まれることも多く、そうした依頼を引き受ける頻度も多いということだ。こうした差が生じる原因は、志向に関するジェンダー差ではなく、「女性は男性よりも志願するものだ」という共通理解にあるようである。

 この結果には当惑を覚えるが、1つだけ明るい希望もある。従業員もマネジャーも、どうすれば不公平な仕事の割り振りを減らせるかのヒントがあるからだ。

 その解決策は、女性が仕事の依頼を断ることではない。そんなことをすれば、組織内で問題を引き起こすうえに、女性がしっぺ返しを受けるかもしれない。そうではなく、経営陣がより公平に仕事を割り振る方法を見出すことである。

 マネジャーは志願者を募ったり、引き受けたりしてくれることが多いからという理由で、女性に志願を要請するのではなく、たとえば、メンバー間で仕事を順番に担当させることなどを考えるべきだ。単に男性が引き受けようとしないから女性が引き受ける頻度が多くなると理解していれば、男性がもっと名乗り出るようになり、女性は公平な扱いを求めるようになるだろう。

 こうした状況の変革は、最も有能な人材を昇進させたいと望む組織にとっての優先課題だろう。昇進につながらない仕事に多くの時間を費やす社員は、潜在能力をまったく発揮できない。女性ばかりにこの負担がのしかかれば、彼女たちの昇進が妨げられるばかりか、企業も貴重な人材を活かす機会を失うことになるのだ。


HBR.ORG原文:Why Women Volunteer for Tasks That Don’t Lead to Promotions, July 16, 2018.

■こちらの記事もおすすめします
オフィス調査で明らかになった、職場における男女間格差の実態
リーダーに関する評価表現の性差は男性優位の現実を示している
最新の研究から読み解く、男女の待遇や振る舞いの違い
女性経営幹部の数と企業の業績は相関する

 

リンダ・バブコック(Linda Babcock)
カーネギーメロン大学ジェームス M. ウォルトン記念講座教授(経営学を担当)であり、社会・意思決定科学部学部長。

 

マリア P. レカルデ(Maria P. Recalde)
メルボルン大学経済学部講師(助教授)。

 
 

リース・ベスターランド(Lise Vesterlund)
ピッツバーグ大学アンドリュー・ウィリアム・メロン記念講座教授(経済学を担当)であり、経済学部学部長。全米経済研究所(NBER)の研究員でもある。