シェア型大黒柱タイプ
男性の中には、みずからをシェア型大黒柱と考える人もいる(このサンプルでは23人、全体の6割)。夫婦双方が仕事と家庭の両方で目標を追求することを尊重している夫である。
このタイプの男性たちは、妻の仕事を高ステータスで尊敬に値するものと見なし、すばらしい言葉で表現した。妻の働きがいかに重要か、世間からどれほど高い評価を受けているか、キャリア上どういう実績を挙げてきたかを長々と語った。たとえばある男性は、妻について次のように説明した。
「彼女のスキルは大勢の専門家の中でも群を抜いています。(中略)パブリックスピーキングがすばらしく上手なのです。彼女の才能の1つは、聴衆が素人であれ玄人であれ、非常に複雑なコンセプトをうまく伝えられることです。(中略)どこかのカンファレンスでスピーチをすると、評価のアンケートで十中八九、彼女がトップです」
このタイプの男性は、妻の収入の価値にも敬意を払った。ある男性は妻のことを自分の「不労所得」と表現した。別の男性は、妻の収入になぜ額面以上の意味があるかを詳しく説明してくれた。「妻はフルタイム勤務ではないので、その点はハンデかもしれません。しかし日給にするとおそらく、2人とも同じくらい稼いでいるでしょう。(中略)共働きのおかげで、どちらも職場での立場が強くなっていると感じています」
彼は職場でトラブルがあったときのことについて、妻に収入があったからこそ、しっかりみずからの立場を主張できたと言う。「私はもちろん、[クビになることを恐れる]必要はまったくありませんでした。2人が路頭に迷うようなことになるはずがないのですから。ローンだって払っていけますし」
妻の仕事をこれほど高く評価する男性たちは、夫婦をシェアする関係と位置づけていた。パートナーである2人がともに、仕事と家庭における希望や夢を追求できることを重視しているのである。彼らは、妻の仕事に自分の仕事と同じ価値を見出して(ときには優先して)、サポートしてきた。ある男性はこう述べている。「私は、妻が専門職として成功できる状況に常にいてほしいので、そのために、私にもプレッシャーがかかってきます。『待てよ、僕らの場合、僕だけが好きな仕事をやっていいわけじゃない。僕中心に世界が回っているわけじゃないんだから』といった感じです」
このように妻のキャリアをサポートする姿勢ゆえに、シェア型大黒柱の男性たちは、自身のキャリアの方向性について確信を抱いていない。調査をした会社は、わき目もふらず仕事に集中することを要求していたし、それが幹部社員への道を開くはずだった。しかし、シェア型の男性たちは、妻のキャリアのために自分が柔軟に対応できる状態でいる必要があり、仕事も、住む都市も国も変わる可能性があると考えていた。そのため彼らは、会社が期待するキャリアパスを追求することに、それほどこだわってはいなかった。
すなわち彼らは、自分で自分に期待している内容が、会社の期待とは違うことを意識していた。ある男性は、私にこう語った。「我が家は少し変わった夫婦かもしれません。私は経営大学院を卒業した専門職のコンサルタントですが、周りの男性は、だいたいが家庭で唯一の大黒柱で、私はそうではありませんから」