仕事はどう変わるのか

 この結果、仕事の性質は2つの面で大幅に変化すると思われる。

 第1に、標準化された、大衆市場向け製品の世界における仕事を特徴づけるルーチン業務は、ますます機械に取って代わられるだろう。

 第2に、より差別化されて急速な変化を続ける製品の世界で、価値を生み出す唯一の方法は、根本的なレベルで仕事を再定義することである。つまり、好奇心、想像力、創造性、感情的知性、社会的知性といった、人間特有の能力に重点を置いて職務設計をするということだ。

 激しく変化する経済では、一般に、3つの仕事分野がいっそう重要になるだろう。

 第1に、「クリエイター」の仕事が増えてくる。クリエイターとは、個々の消費者の急速に進化するニーズを予測し、創造的かつ高度にカスタマイズした製品・サービスを設計して、提供できる人材だ。いろいろな意味で、いまビールやチョコレートの分野ですでに起きているような、クラフト・ビジネスの復活を目にすることになる。これにより、たとえば木工や編み物などの趣味を生かし、より深く継続的に顧客とつながって生計を立てる人々が増えるだろう。

 第2に、「コンポーザー」の仕事の分野が増えるだろう。これは、ニッチな顧客の願望とニーズを熟知し、彼らにとって魅力的かつ実り多い一連の体験を「組み立てる」という仕事だ。顧客の興味が形ある製品の所有から、意義深く記憶に残る体験の探求へと移るにつれ、この分野は成長し、ますますやりがいのある仕事になるだろう。

 こうした体験は、アートギャラリーや近所の庭をめぐるツアーから、他者とより豊かに深くつながるための交流体験まで、多岐にわたる。たとえば木工職人なら、同業者を集め、経験を共有し、互いに刺激し合うことができるだろう。

 最後に、3つ目の重要な分野となるのは「コーチ」の仕事である。これは、さまざまな領域で顧客が潜在能力を発揮できるように、手助けする仕事だ。現在、初期の兆候として見られるのは、顧客の健康維持と身体能力の向上をサポートする「健康コーチ」の増加だ。

 人々が潜在能力をより発揮したいと望むようになるにつれて、多様な分野でますます大勢のコーチを目にするようになるだろう。たとえば、デートや人間関係、旅行、娯楽、金融、生涯学習などだ。ガーデニングや、服装やメークによるクリエイティブな自己表現を手助けするコーチングも必要とされるかもしれない。

 その結果、何が起こるだろうか。今日の多くの仕事を特徴づけるルーチン業務を、人間が行う機会は減り続けるだろう。その理由の1つとして、機械は人間よりもはるかに優秀にルーチン業務をこなせることが挙げられる。

 しかし、より説得力のある理由は、一般的に顧客の要求がますます高まりニーズが変わる中、ルーチン業務は、企業に求められる価値創造に段々とそぐわなくなるからだ。仕事の重点は、機械には真似が難しい、より人間的な能力を問われる活動へと移っていくだろう。

 実際、我々人間のニーズは尽きることを知らない。食住の最も基本的なニーズが満たされるや否や、人はより高い目標を設定するのが通常であり、人間としての潜在能力をより多く発揮する方法を探し始める。

 ここに、素晴らしい真実がある。人間としての潜在能力をもっと発揮したいというニーズこそまさに、人間にさらなる潜在能力を発揮させる形での仕事の進化を促す力となりえるのだ。今後現れるそうした新しい仕事では、大学の学位は必要ないかもしれない。しかし、他者とより豊かで意義深い方法でつながる情熱と願望が問われるだろう。

 この変化は間違いなく、困難を伴う。私たちは、仕事やビジネスに関する、最も根本的な前提を疑ってみなければならない。たとえば、企業は従業員をコストと捉えるのではなく、拡大し続ける価値を生み出せる資産と見なす必要がある。現行の効率重視の姿勢を見直し、急速に変化する顧客ニーズに対応するために学習を重視するという姿勢を、歓迎する必要もある。

 要するに、テクノロジーによって、こうした課題に取り組む人々が報われる市場原理が広がり、それを無視する人々は主流から外れることになるのだ。

 そして、テクノロジーは人間から仕事を奪い、人間性を押し潰すどころか、さらなる潜在能力を発揮できる仕事や活動に目を向けるチャンスを与えてくれる。これほど素晴らしいサービスは、ないだろう。


HBR.ORG原文:3 Kinds of Jobs That Will Thrive as Automation Advances,  August 21, 2018.

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ジョン・ヘーゲル3世(John Hagel III)
シリコンバレーにある研究所、デロイト・センター・フォー・ジ・エッジの創設者兼会長。シリコンバレーに長らく在住し、著述家としても活躍。ジョン・シーリー・ブラウンおよびラング・デイブソンとの共著『「PULL」の哲学』(主婦の友社、2011年)など、7冊の著書がある。