なぜいま、ソーシャルイノベーションなのか
街中や駅前で『ビッグイシュー日本版』という雑誌を販売する人の姿を見たことがあるだろうか。これは、ホームレスの自立を目的とした「ビジネス」である。
この特徴は、雑誌の定価の50%以上が、販売者の収入になることにある。雑誌が1冊売れれば、手元にどの程度残るかがわかるため、彼らにとって家賃の支払い目標ができる。家賃が支払えれば、住所が手に入り、就職活動を行いやすくなる。「自立」への第一歩となるのだ。
もう一つの特徴が、社会との関係性が生まれることだ。毎日、路上に立っていると、通行人から「元気?」や「昨日、休んでいたね」といった声がかかるようになる。家族や友人、職場などとのつながりを失ってホームレスになった彼らは、この仕事を通じて自尊心や世の中との関係性を取り戻し始めるのだ。