官民連携事業が
なかなかうまくいかない現実

 2014年にマサチューセッツ州知事室から筆者のもとに電話があり、ある半官半民の事業組織への協力を要請された。その組織は、ケンタッキー、マサチューセッツ、ペンシルバニア、バージニアの4州(コモンウェルス)にあるコミュニティカレッジ(2年制の公立大学)の、質向上に取り組む団体だった。人材は重視しているテーマの一つであり、どのCEOにもこのような依頼が時々舞い込む。自分にできる協力はするというスタンスなので、この依頼を受けることに決めた。

 この組織との会合に数回出席する中で、すぐに不満を感じるようになった。官民連携事業に協力するのは初めてではなかった。その事業のいくつかは非常に高い成果を上げているものの、うまくいっていない事業が多すぎる。あまりにも多いため、感覚がマヒして、成果が上がらないのが当然のように思えるほどだ。ある日の会合の最中に、ステート・ストリート・グループがみずから人材育成問題の諸要素に取り組むとすれば、自分たちの影響力をどのような形で発揮できるかを思い描き始めた。

 ステート・ストリート・グループは大きな慈善団体を有しており、すでに教育と職業訓練の分野に年間数百万ドルの寄付を行っていた。当グループはボストンで最大級の従業員数を擁する雇用主であり、毎年、職務経験のない新人を採用している。これが重要なポイントだ。学校教育のゴールで得られる素晴らしい報酬は仕事とキャリアであり、ステート・ストリートなら仕事とキャリアを非営利団体にはできない方法で提供できる。