ディープテックは何も海外だけの話ではない。かつてディープテックで世界を席巻したのは日本だったからだ。なぜ、日本はディープテック大国になれたのか、そして現在、影を潜めてしまったのはどうしてなのか。日本メーカーに焦点をあてたディープテック連載の第3回をお届けする。

家電メーカーからの脱却か!?
CESで感じた日系企業の大きな変化 

 2019年1月、筆者は米ラスベガスで開かれた世界最大の家電・IT見本市「CES(コンシューマー・エレクトロニクス・ショー)」の会場にいた。CESには日本からも多くの企業が出展していたが、筆者が最も気になったのはパナソニックのブースだった。

 パナソニックは、テレビやPC、冷蔵庫、洗濯機など家庭で使われるさまざまな電化製品を発売している総合家電メーカーである。ところが、同社の広大なブースの約半分を占めていたのは、「コネクテッドモビリティ」とも呼ばれるネットワーク技術を駆使した最新の自動車関連製品・サービスであった。

 たとえば、上下分割式eモビリティ「SPACe_C(スペイシー)」だ。デモ車の展示スペースは広大で、実際に人が搭乗する走行デモが行われていた。このモビリティは、上下分離型で上部を自由に載せ換えることができ、地域での人やモノの移動への活用など、さまざまな利用シーンを提案していた。

パナソニックがCESで紹介したSPACe_C


 また、ハーレーダビットソンの電動バイク「LiveWire(ライブワイヤー)」があった。ここにも、パナソニックのコネクテッドサービスが提供されている。たとえば、バッテリー残量レベルや充電完了までの時間などをスマートフォンアプリで確認できるものだ。

 実は、ここ数年、CESは家電・IT見本市といわれながら、モビリティが花形だ。総合家電メーカー代表格であるパナソニックからも、車載用電池を含むモビリティ事業を今後の事業の柱に据えて、家電メーカーからの脱却を図ろうという意思を感じた。その後のトヨタ自動車との車載用電池事業を手掛ける新会社の共同設立などからも、これは明らかであろう。

 ほかにも、今回のCESに出ていたドイツのボッシュ・グループも目を引いた。ボッシュは、モビリティが今後、コネクテッドサービスやMaaS(Mobility as a Service)に向かう中、多くのディープテックスタートアップを買収しながら、買収した会社の製品やサービスを組み合わせて、電動の自転車・バイク・自動車のそれぞれで、新しいモビリティのあり方や使い方を提案していた。

ボッシュがCESで提案した自転車の新しい形


 今回のCESのパナソニックやボッシュの展示にうかがえたのは、家電メーカーが他のメーカーの単なる御用聞き企業からソリューション提案型企業へと変貌しつつあるということだ。単に部品を納入するだけではなく、最新技術を生かしてこういった使い方をするべきだ、という提案型へと進化しつつあると少なからず感じたのだ。