たしかに、カンファレンスやクライアントとの会議の合間に、観光の時間をひねり出すのは難しいかもしれない。だが仕事のための旅行なら、あなたがチームのメンバー(少なくともあなた自身)を未知の領域に連れて行くこともあるだろう。この探索の時間を、新しいチャンスを発見して手に入れる実践の機会と考えてみるとよい。

 最近、私はイスラエルに5ヵ月間の長期出張をした。多くの出張者のように、ただ身を潜めていることもできただろう。だがもしそうしていたら、この旅に実りをもたらした、多くのチャンスを逃していたはずだ。

 テルアビブでは、ある著作家兼起業家との出会いがあり、彼の人脈に引き合わせてもらった。そして米国に比べればイスラエルからひとっ飛びで行けるウィーンで、普段ならやるはずのない講演をすることになった。主催元の集中訓練プログラムは学ぶところが多く、結局は最後まで参加した。

 たとえ短い出張でも、もっと手軽に出張に冒険を取り込む方法がある。ホテルではなくエアビーアンドビーの民泊を利用しよう。会議の後で博物館に立ち寄ろう。家では食べられないものを食べよう。要は、何か新しいことをやってみることだ。

 私の愛読書の1つ、How to Be a People Magnet(磁石のように人を引きつける方法)では、これは「スクランブリング」と呼ばれている。安全地帯から足を踏み出せば、未来の人脈の拡大につながる。人は、同じ興味を持つ誰かと話したいのだから。

 出張中に実験的なテクノロジーを試すことでも、冒険した気分になることができる。少し前に発見して、私のお気に入りの旅行用品となっているヒューマンチャージャーという製品がある。iPod nanoに似たこの機器は、耳孔から脳の光受容領域に青色光を照射するもので――こう言うと少し怪しく思われるかもしれないが――時差ぼけには効果抜群だ。

 どんな規模や形であれ、冒険はビジネスの敵ではない。それどころか、新しいものを試し、多様な人々と仕事をし、複雑な状況でその場に応じた対処をすることは、雇用者がなかなか教えられない「ソフトな」スキルである。心地よいとはかぎらないが、それも冒険の一部なのだ。そのことを、多くの出張者は忘れてしまっていないだろうか。


HBR.ORG原文:How to Make Any Business Trip Less Boring, January 16, 2019.

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ステファン・スペンサー(Stephan Spencer)
ネットコンセプツの創業者。同社は2010年にコバリオに買収された。連続起業家、プロの講演家、ポッドキャスト配信者であり、頻繁に出張している。共著にThe Art of SEOがある。