過剰なまでの叱咤激励、スローガン、特殊用語、ポッドキャスト、YouTubeのクリップ、モチベーション向上のためのチームビルディング・アクティビティ、歌の斉唱などが見られたら、赤信号だ。個人の考え方や感じ方のせいで排除されていると感じる可能性があるときは、すでに組織はカルトの領域に足を踏み入れている。

 だが、それは最終的にビジネスに悪影響を及ぼす。硬直したカルト的行動はイノベーションを阻害し、企業の将来を危険にさらすだろう。

 もしあなたが上級の管理職なら、会社の文化が心理的な強制になっている兆候がないか、常に目を光らせるべきだ。

 ぜひ自問していただきたい。従業員が会社のビジョンを信じているのは、それを理解し賛同しているからなのか。それとも、信じることになっているからなのか。会社は、従業員が充実した私生活を送ることを奨励しているか。何より、ブレイクスルーの原動力となる個性や、安易に同調しない姿勢を促しているだろうか。

 リーダーシップの真価は、部下の潜在能力を解き放ち、最高のものを引き出すことにあり、部下を奴隷化するような企業文化をつくることにはない。

 あらゆるレベルの管理職に求められるのは、批判的思考を奨励し、健全な判断力を大切にし、個性を尊重し、信頼性に満ちあふれ、従業員のその人ならではの長所や知識を活用することである。

 もちろん、一体感は重要である。偉大な文化は過去から学び、核となる価値観に一致があり、人々が互いに敬意を表し、批判もし合い、開かれたコミュニケーションがあり、楽しみ、チームプレイをする。

 だが、健全な議論も同じぐらい重要である。人々が価値観や規範について議論し、異なる意見を表明できることが必要だ。多様性や意見の違いを認め合えなくなったとき、文化はカルトになるのである。


HBR.org原文:Is Your Corporate Culture Cultish? May 10, 2019.

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マンフレッド F. R. ケッツ・ド・ブリース(Manfred F. R. Kets de Vries)
エグゼクティブのコーチ、精神分析家、経営学者。フランス、シンガポール、アブダビのINSEADで、リーダーシップ開発と組織変革のディスティングイッシュト・クリニカル・プロフェッサー(臨床卓越教授)を務める。最新著作は、 Down the Rabbit Hole of Leadership(未訳)。