教訓1:女性は、一般的に言われている意味で、自分を過小評価しているのではない

 女性は男性に比べて自分に自信がない、とよく言われる。ところが最近の調査では、意外にも逆の結果が出ている。

 男子と女子を比較した過去の調査では、自信の持ち方に男女差があったが、この差は23歳までに劇的に減少する。また、過去の研究者たちは、自己の管理能力に対する評価には男女があると指摘したが、最近の調査では、リーダー的地位にいる男女の自己評価にはほぼ差が見られなかった

 サラ・グリーン・カーマイケルの言葉が冴えている。「今回もですが、成人女性の調査で、もうちょっと気概があればもっと上に行けるのに、なんていう縮こまった小心者が多いと感じたことはありません」

 平均的な女性は、自分はリーダーとして力不足だと感じていないが、それとは微妙に異なる壁にぶつかっている。それは、自分の貢献が周囲に評価されているかどうかに関する自信だ。ある調査では、EQ(心の知能指数=重要なリーダーシップスキル)に関する自己評価に男女差はなかったものの、上司からの評価を予測させたところ、女性が予測した採点は男性の3分の1だったが、実際には男性よりもわずかに高く評価されていた。

 では、女性はなぜ、自分の価値を実際よりも低く見積るのだろうか。研究者はこう見ている。「リーダーといえば男性」という根強い固定観念(暗黙的でもあからさまでも)が存在するために、固定観念に反している自分は仕事ができないと思われているのではないかという不安を感じている、と。

 自分が客観的にどう見られているかを推測する能力は、よくメタ認知能力とも呼ばれ、自己認識能力の重要な一側面だ。実際に、自分の貢献が評価されていないと感じると、女性は意図せずに尻込みする場合がある。自分の価値が認められていないと感じている女性リーダーは、希望の仕事に名乗りを上げたり、昇進の機会にアピールしたり、昇給を要求したりすることに必要以上に慎重になりうる。

 したがって、女性がリーダーとして活躍するには、いまより正確に、自分の貢献が周囲にどう受け止められているかを把握できることが必要だ。

 自分の推測と現実とを比べるのに有効な一つの手法として、RBS(Reflected Best Self-exercise:最高の自分客観法)がある。私も企業幹部向けのコーチングでよく使うが、他者から見た自分の強みに気づくのに役立つツールである。

 RBSでは、過去や現在の自分を知る人々(現職や前職の同僚、部下、上司、友人、家族など)を8人以上選び、その人から見たベストな自分を、その具体的な場面とともに挙げてほしいとメールで依頼する。送られた回答を基に、自分のキーイメージやパターンを見極める。最後に、「人から見た最高の自分」像をつくり上げる。

 女性リーダーにとって、自分の客観的な強みや、どのように貢献しているかを知ることは、きわめて重要だ。若干の勇気と素直に受け入れる気持ちが必要だが、このエクササイズは、自分にかけているブレーキを外し、より大きな、よいチャンスに踏み出すきっかけを与えてくれる。