教訓2:女性は十分にフィードバックを受けていない

 フィードバックは、自分が果たしている役割や、今後どうすればさらにステップアップできるのかを本人に気づかせるために、欠かせないものだ。女性も男性と同じくらいの頻度でフィードバックを求めているにもかかわらず、それを得られる確率は男性より少ない

 私は近著で、水インフラに関する大きな入札案件を担当していた、エレナーというクライアントの話を紹介した。彼女は競合に負けて落札に失敗したとき、自分がその結果を招いたのかどうか知りたくて、同僚のフィルにフィードバックを求めた。「最終プレゼンを見ていたでしょう。私、仕事を逃すような失敗をしたかしら」と尋ねると、「全然そんなことないよ!よくやったよ!」と返され、ますますわからなくなった。

 数日後、会社の別の男性から「残念だったね」と電話がかかってきた。エレナーは、「悶々としているわ」と泣き言を言った。「何がだめだったのかわからなくて!私のプレゼンのせいじゃないことは確かなんだけど」。すると男性は言った。「そう?フィルはそうは言ってなかったよ。フィルはひどかったって」。エレナーは愕然とした。わざわざ無理して聞いたのに、完全に嘘をつかれたのだ。  

 率直なフィードバックというのは、誰もが知るように難しい。相手が異性であれば、なおさらだ。女性に難しいことを言うのを控える態度は、「慈悲的性差別」という専門用語で呼ばれている。それは職場で男性の上司や同僚が、女性に対して否定的なフィードバックをしないという形で現れる。傷つけたり不安にさせたりしたくないからだ。

 女性が運良くフィードバックを得られたときも、男性が得るフィードバックよりも具体性に欠ける場合が多く、その影響は大きい。調査によると、曖昧なフィードバックを受けた女性は、パフォーマンス評価が低くなる傾向がある。曖昧なフィードバックで批判されると、期待に応えられていないことは伝わっても、どこがいけないのかがわからず、何をどう変えたらよいか判断できないからだ。

 たとえポジティブなフィードバックでも、具体性に欠けると本人に不利な状況を招く。評価されていることは何となくわかっても、評価された行動や成果がはっきりしないと、何を継続すればよいかわからないためだ。そして具体的な実績の記録がなければ、昇進や昇給を主張しにくい。女性が具体的なフィードバックを求め、書面で得られる環境では、男性に有利な評価項目が排除される効果があることがわかっている。

 そうなると次に問題になるのは、どうすれば女性は詳細なフィードバックを得られるのか、だろう。

 私たちが自己認識力の高い男女に対して行った調査では、フィードバックのもらい方に関する、興味深いパターンが見つかった。彼らは、自分の活躍に期待し言いにくいことも言ってくれる人(たとえば、エレナーの正直な友人は有力候補だが、フィルは当然アウトだ)を、比較的少ない3~5人選び、その人たちにだけフィードバックを求めていた。

 そうした愛のある批評者を見極め、意見を求めることができれば、女性リーダーが必要とするフィードバックを得ることが可能になる。やり方は、それぞれの理にかなった方法でよい。

 私がコーチングしている女性幹部の一人は、自分が変わろうとしている部分を愛のある批評者に伝え、2ヵ月に1度ランチに誘って、フィードバックを受けるようにしている。そこまで形式化せず、愛のある批評者と会った際に、最後に2分間のフィードバックを求めるという人もいる。

 フィードバックを受けたいときの言い方に関して言えば、最初から完璧にできなくてもやってみる価値はある。ビジネス・スクールの教授エル・ベル・スミスは、フィードバックに具体性が欠けている場合、フォローアップとして次のような質問をするとよいと言う。「私がどのようなときにそうしたか、一例を挙げていただけませんか」「(その言動によって)どのような影響があったと思いますか」「私はそれを何回くらいしているでしょうか」