教訓3:女性はフィードバックを真剣に受け止める傾向がある

 もちろん、誰であろうとフィードバックを逐一、額面通りに受け取るべきではないし、人が思う自分が自分のすべてだと考えるのもよくない。

 一般的に、人は3種類の情報を使って自分像を描いている。すなわち、自分が思うイメージ、人から見たイメージ、そして、人との比較だ。

 男性は、自身のイメージと社会的比較を重視するのに対し、女性は人からどう見られているかに重点を置きがちだ。それだけでなく、フィードバックを受ける前は、男女とも自分のパフォーマンスに対して同じような見方をしていたのに対し、フィードバックを受けた後の女性は、男性よりも自己認識を変える傾向が強い。

 他者からのフィードバックを無視することは適応性がなさすぎるが、自己認識を簡単に捨てるのも同じくらい危険なことだ。他者の評価を重視しすぎると、個人的な基準や目標を見失い、自分の価値観と言動がちぐはぐになりやすい。他人の承認に依存しすぎる人は、恐怖や欠点、不安について考え込む傾向がある(もともと、女性のほうが男性よりも考え込むでもある)。

 F. スコット・フィッツジェラルドはかつて、「知性とは、相反する2つの考えを同時に抱えていても、なお頭が働くことだ」と言った。自己認識力は、それに少し似ている。真実は1つではなく、自己と他者の見方が複雑に絡み合っている。

 実際に、この2つの視点は、異なる側面を見ていることがわかっている。たとえば通常、目的や動機は本人のほうがよくわかっているが、態度は他人のほうがよく見えているものだ。だから、人の意見を真剣に聞くことは大事だが、それによって自分を決めつけたり、自己イメージを丸ごと塗り替えたりするのは間違っている。

 周囲の意見に左右されるクセを治すには、自己イメージをクリアにする努力をするとよいだろう。自分がどのような指針に従って人生を送りたいか、一番の夢は何か、最も燃えるのはどのようなプロジェクトか。方法(日記、マインドフルネス、親しい人との会話など)はどうあれ、周囲からのフィードバックと同じように重視することだ(ご自身の自己イメージと、他者が持っているイメージとを比べてみたい人は、私たちが考案した質問票を活用してほしい〔無料〕)。

 女性リーダーは、もっと自己認識に頼ったほうがうまくいく場合が多い。周囲がまだ女性の能力に気づいていないいまは、特にそうである。

 したがって、たとえば自分が得意だと思うことに関して、上司から否定的なフィードバックを受けたとしても、すぐに諦めてはいけない。どうしたら認めさせられるか、考えよう。米最高裁判事ソニア・ソトマイヨールが言ったように、「どの職場にも否定論者がいて、私にこの仕事は無理だと言った。私には、その人たちが間違っていることを証明する責任があると思っている」。そう思って、やるだけやってみても損はないのでは?


HBR.org原文:Why Self-Awareness Isn't Doing More to Help Women's Careers, May 31, 2019.

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ターシャ・ユーリック(Tasha Eurich)
幹部人材を育成するザ・ユーリック・グループのプリンシパル。組織心理学者、研究者、著述家。著作はニューヨークタイムズ紙のベストセラーリスト入り。新著Insightでは、自己認識と職場での成功との関係について探求している。