生産的な注意散漫
肝心なのは、通知をチェックしたい、SNSを読みたい、時には動画を見たいといった願望を受け入れ、むしろ認めることだと、私は発見した。ただし、忍耐力も同時に駆使するのである。
私は平日の仕事のスケジュールに、「生産的な注意散漫」のための休憩をしょっちゅう入れることにした。時間の定まった休憩を使って気を散らしたい衝動を解放するのだ。
私はまた、この休憩時間に身体的な要素を取り入れることにした。たとえば、短い単純な瞑想の時間は、思考をリセットして、仕事を再開するときに新鮮な視点をもたらしてくれる。
秩序立てて気を散らすことが、大きな違いを生む。休憩をスケジュールに組み込むことが創造性を高めることを示す研究結果もある。
私は、いずれ休憩時間になるとわかっているので、気を散らす要因に飛びつくのを我慢できるようになった。見たい衝動は次の休憩で満たせるぞ、と自分に言い聞かせることができるのである。
何ヵ月もかかったが、私は仕事にひたすら集中する時間を、最長約22分にまで延ばすことができた。短時間に区切り、1つのタスクに集中するキッチンタイマー方式を自己流にアレンジしたのである。
その結果、私はまさにユーデミーのアンケート回答者と同じように、創造性だけでなく、幸福感も高まっていることに気づいた(アンケートでは、気の散る要因を減らすことを学んだ人々の4人に3人は生産性が上がったと答え、さらに56%が職場での幸福感も増したと答えている)。
自分をコントロールする
進歩の止まらない怒濤のデジタル情報に囲まれ、注意散漫になっている無数の労働者にしてみれば、ここまでの話はすべて「言うは易く行なうは難し」だろう。
たしかに、意識的に取り組む姿勢が必要だ。人は皆、毎日、行動を変えようと決意する道を選ぶことができる。そこには、SNSを何度も見るといった悪い習慣を正すことも含まれる(SNSは、問いかけたら答えてほしいし、問われたら答えたいと思う人間の心理に大いにつけ込んでいる)。詰まるところ、「情報を逃す不安」を感じている自分を、「情報を逃しても不安にならない」ように変えるのである。
コペンハーゲン・ビジネス・スクールのある研究者は、『MITスローン・マネジメント・レビュー』誌の論文で、生産的な注意散漫について、好奇心と集中力のバランスを取り、「多様なインプットを積極的に求める」と同時に、当面の仕事にも集中する度合いを高められる方法だと述べている。
それが可能であることを、私自身が証明している。
HBR.org原文: Doing Creative Work When You Can’t Stop Looking at Your Phone, June 05, 2019.
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ブライアン・ソリス(Brian Solis)
デジタル・アナリスト集団「アルティミーター・グループ(Altimeter Group)」のプリンシパル・アナリスト。著書にLifescale(未訳)がある。





