パーパスの再定義に成功した企業の
企業価値は上がっている

石川雅崇
アクセンチュア 戦略コンサルティング本部
顧客戦略グループ
アジア・パシフィック統括
マネジング・ディレクター

同志社大学卒業後、1995年にアクセンチュア入社。ノースウエスタン大学経営大学院(ケロッグ校)アドバンスド ビジネスマネジメント プログラム(エグゼクティブMBA)修了。現在は、成長戦略領域のアジア・パシフィック統括として、デジタルによる企業成長戦略や新規事業戦略の立案、企業変革を推進。グローバルにおけるアクセンチュアの知見/論考を取りまとめるデジタル編集委員の一人。早稲田大学客員教授。「サーキュラー・エコノミー:デジタル時代の成長戦略」(日本経済新聞出版社)監訳。

――「パーパス・ドリブンな企業」とはどのような企業でしょうか。

石川 「社会的課題に対し、変革を通じて社会にインパクトを与えていくような経営を実践している企業」と捉えています。こうしたパーパス・ドリブン企業は、企業価値を大きく成長させています。実際、図1のように、2018年の時価総額TOP50社とパーパス・ドリブン企業の企業価値成長率を2010年と比べてみると、前者の1.9倍に対し、後者は3.0倍となっています。

――具体的にパーパス・ドリブンな企業の例を挙げていただけますか。

石川 日本で消費者の無関心化が進んでいる消費材とヘルスケア・保健業界から、ユニリーバとロシュの取り組みを紹介したいと思います。

 ユニリーバは、「サステナビリティを暮らしの“当たり前”に」をパーパスに据え、サーキュラー・エコノミー(循環型経済)を中核にしたビジネスモデルに転換しました。その結果、コスト削減効果(6億ユーロ/5年間)を売上成長効果(41億ユーロ/4年間)がはるかに超え、企業価値が大きく向上しています。

写真を拡大
出所:アクセンチュア

 具体的には、“サステナビリティ(持続可能性)”という価値観に基づいて新たに事業ドメインを再定義し、「サステナブル・リビング・ブランド」を構築。図2のように、“タテ”の事業ドメインから“ヨコ”の事業ドメインへとシフトしました。これにより、「環境・社会に配慮した製品を利用したい」という多くの消費者から共感・支持を得ました。

 ユニリーバは400超のブランドを持っていますが、このうちサステナブル・リビング・ブランドに定義されているのは26種類に厳選されています。ブランド数はわずか5%程度ですが、その売り上げは全体の約7割を占めています。

写真を拡大
出所:アクセンチュア