●自分の価値観をしっかり保つ
Trust and Betrayal in the Workplace(未訳)の著者デニス・レイナいわく、職場における裏切りの85%は故意によるものではない。しかし、上司の側に裏切るつもりがなかったからといって、辛さが和らぐわけでもない。
自分の行動が及ぼす影響を自覚していない上司に対して、懸念を示すことができる場合もある。上司が心の底から後悔して、過ちを正すことを約束すれば、信頼は回復し、人間関係がより強固になるかもしれない。
だが、上司が日常的に信頼を裏切るなら、それに呼応して自分自身の行動が無意識のうちに悪化していないか確認するのが大切だ。研究によると、上司の行動が悪いと、部下の行動も悪化する確率が高まることが明らかになっている。
このような上司のもとで自分の職分をきちんと果たさなければならない場合、みずからの行動基準となる価値観を明確にし、その価値観を損なうような行動に対して毅然とした姿勢を示そう。たとえば、インクルージョン(包摂性)が重要だと思っているなら、どのような行動を取ると他人が疎外感を覚えるかを考え、自分の行動を観察し、そうした振る舞いをしていないか確認すること。
他人をいかに尊重するか、自分の考えをいかに伝えるか、功績を認めるべきときはどのように認めるか。そして、自分の貢献についていかに話すかということでさえ、自分の価値観が基礎になる。上司の価値観が自分とは相反することを理由に、自分の価値観を曲げるのは仕方ないと妥協してはならない。
●裏切るパターンに注意を向ける
上司の虐待行為に耐えていると、やがて、こうなったのは自分のせいだという結論に達することがよくある。家庭内暴力の被害者に起こるのと同様に、ある種の「組織的ストックホルム症候群」が起こり、いつしか裏切りは普通のことだと思うようになる。
上司が裏切るパターンを見つけ出し、できる限り食い止めれば、このストックホルム症候群に陥らずに済む。もし上司が約束を守らないのなら、約束したことをきちんと記録すること。上司に自分の功績を奪われたなら、該当するプロジェクトを見聞きしたとき、自分のことを思い出してもらえるように重要なステークホルダーに知らせよう。そうすれば、少なくとも心の健康をある程度は保ち、自分の認識を上司の行動と切り離しておくのに役立つ。
●誰もが裏切るわけではないと心に留める
上司に繰り返し裏切られれば、周りの人たちも信用できないと無意識に結論づけてしまいがちだ。上司の裏切りを他のすべての人間関係、とりわけ権力を持つ人々との関係にも当てはめないよう注意すること。
自分の行動に目を向けよう。自分が頼りにしている人の動機や行動を常に疑ってはいないだろうか。周りの人々が下した決定を、過度に詮索していないだろうか。私がコーチングをしたある経営幹部は、取締役会で故意に事実を曲げて自分について言及されたと感じていていた。彼女は、自分のチームや夫、ひいては息子の行動の動機さえ詮索していることに気づいた。
裏切りには、人生の他の部分にまで広がってしまうほど、強い影響力がある。信頼している人すべてが、上司のように裏切るわけではないのだと自分に言い聞かせてほしい。