本稿筆者の一人が協力し、経営陣は意外な社内人材にデジタル施策を主導させた。デジタルを最も拒んだ他ならぬ、営業部門のトップを抜擢したのである。このリーダーはデジタルの経験に乏しく、血気盛んな性格で知られていたが、結果を出してきた人物であり、学習する意欲もある。
彼女は最初、本件を主導してほしいとの要請を固辞したが、結局は引き受ける。そしてデジタルチームの全員をそのまま温存し、持ち前の意志の強さで、法人顧客と自社の両方のニーズを理解しようと乗り出した。社内の上級幹部、および彼らと提携する小売店と面談し、ニーズ、価格戦略、販路について学んでいった。
その後、彼女はデジタル戦略を再設計し、従来の販路とオンライン販路での販売がバランスよく両立するようにした。次に注力したのは、自社の営業部隊と幹部らへの教育だ。デジタルの取り組みが彼らの目標の達成をいかに後押しするかを教え、オペレーションと価格設定における異なる複数のモデルについて指南し、デジタルが長期的にいかに有益となりうるかを示した。
そして、彼女は法人顧客を1社ずつ訪問し、双方の成功のためにどう支援すべきかを知るために協議した。たとえば、自社の製品を小売業者のオンラインストアの最上部に掲載してもらうために協力し合う、などだ。新たな法人顧客ができるたびに、彼女はこのプロセスを繰り返し、必要に応じてやり方を向上させていった。
新たな取り組みは大いに成功した。B2Bパートナーとの協働、そして妥当な場合はB2Cのデジタル施策によって(その多くは、小売店が実現できないユニークな付加価値を提供できる部分で実施された)、同社はデジタル面のリーディング企業となったのである。
教科書通りの戦略に従った1度目の取り組みが、なぜ失敗したのか。デジタル面で出遅れているようにも思えた2度目の取り組みが、なぜ成功したのか。後知恵で考えてみれば、わかるはずだ。