第1に、ある人が魅力かどうかは、数値的に測定できる。よく使われるのは、複数の人がつけた点数を関数処理する合意評価法だ。

 たとえば10人の「審査官」に、100人のルックスがどのくらい魅力的か10点満点などで採点してもらう。「魅力的」という評価は主観的なものだ(だから人によって評価が異なる)が、100%主観的というわけでもない。たいていの人は、たとえ同じ文化に属していなくても、目の前の人物が魅力的かどうかについて、おおむね意見が一致する傾向がある

 こうして割り出された「魅力点」は、採用面接の評価から勤務評価、昇進や給料データまで、幅広い成功指標と関連していることがわかる。「魅力があること」を正式な採用基準にしている会社はまずない(もちろん出会い系サービスの世界は別だ)以上、主観的な魅力点と客観的な成功指標の間に本当に関連性があるのか、あるとすればその理由は何なのかを明らかにすることには、明白な価値がある。

 このときAIを使うと、ある人の「魅力点」から「仕事ができる人と『見なされる』可能性」を予測できる。それを見る限り、人間のルックスは、公平で偏見のない世界を願う私たちが望むレベルをはるかに超えて、幅広い領域で成功とリンクしていることがわかる。

 では、科学はどのような対策を提案しているのか。

 ルックスのいい人が優遇されるバイアスは、すでに教育の世界に存在する。

 複数の研究によると、魅力的なルックスの学生は、良識的で知的と見なされ(たとえ実際はそうでなくても)、大学で好成績を取る傾向がある。大学入試でも、外見は助けになる。魅力的なルックスの受験生は、入試面接で好ましい評価を得る傾向があるのだ。これは、魅力的なルックスの人は総じて社会性があり、健康的で、成功していて、正直で、才能があると見なされる「ハロー(後光)効果」と一致する現象だ。

 メタ分析研究によると、ビューティー・バイアスは子どもにも投影される。魅力的なルックスの子どもは、より賢くて、正直で、やる気があると思われる傾向があるのだ。そして子どもも、魅力的な大人を見たとき同じような推測をするという。

 だとすれば、ビューティー・バイアスが職場に影響を与えているという指摘は、何ら驚きではない。複数の研究によると、ルックスがいまいちと見なされる人は、採用される可能性が低く、クビになる可能性は高い。

 ある研究チームは、1万1000通の履歴書をさまざまな職種の求人企業に送付した。履歴書の内容はすべて同じで、応募者の写真だけが違う。すると魅力的なルックスの男性と女性は、いまいちのルックス(あるいは写真なし)の応募者よりも、面接に進める可能性がはるかに高かった。

 ルックスと長期的な所得の関連性も、多くの研究で立証されてきた。平均以上のルックスの人は、平均以下のルックスの人よりも、給料が10~15%高いというのだ。

 米国の場合、こうしたビューティー・プレミアムは、人種や性別に基づくプレミアムと似ている。注目すべきことに、これは極めて成功した人たちの間でも見られる。フォーチュン500企業の経営幹部の魅力点は、それぞれの会社の利益と関連性が見られたのだ。

 たしかに、相関関係は因果関係とは違うが、相関関係にも原因があることを忘れてはならない。なかでも議論を呼ぶ恐れがある説明は、ルックスと仕事上の成功の間に相関関係があるのは、ルックスがいい人はバイアスによって優遇されている(だけ)ではなく、実際に能力的に(も)優れているからだ、というものだ。

 この考え方は、多くの進化心理学の研究により裏付けられている。ルックスがいい人が、人生でより大きな成功を収めるのは、少なくとも部分的には、知性や能力といった適応特性を多く持ち合わせているからなのか。

 これは検証が難しい問題である。どれほど客観性を重視したといっても、主観的な好みが混ざっていない勤務評価は存在しない。ほとんどの人の勤務評価は、所属部署の管理職や、直接的な上司の主観的な評価だけがベースになっている。

こうした勤務評価から、バイアスや主観的な好みを本気で取り除くためには、従業員の会社への貢献度をどのように数値化すればいいのか。