●個人の幸福感からみんなの使命感へ
企業幹部は、社員が不幸せだと知ると、それを自分の責任と感じる人が多い。しかし、社員の幸福度に直接及ぼせる影響は、その人たちの直属の上司やミドルマネジャーのほうが大きい。だから、その役割はそうした人たちに任せたほうがよい。
人は昇進を重ねると、次第にこれらの役割を担わなくなり、担当部署や全社の使命感を強めることがメンバーに最も貢献する方法になる。多くの研究から明らかなように、人は個人の使命と組織の使命を一体化できたとき、幸福感が高まり、仕事へのエンゲージメントも深まる。社員がそれを達成するために支援できるのは、幹部だけだ。
マイクロソフトのサティア・ナデラCEOの例が参考になる。ナデラは打ち解けた環境で幹部チームのメンバー対話し、各自が仕事を通じて何を成し遂げたいかを話し合った。このような機会を設けた目的は、マイクロソフトという場を通じて、どのように各自の使命を実現するかを考えさせることにあった。同社のキャスリーン・ホーガン最高人材責任者は、私にこう述べている。
「自分の使命を会社の使命と結びつけることにより、私たちは働き続けられる。物事の全体像を見たとき、自分が大きな貢献をしていると思えれば、辛い日々の中でも活力が湧いてくる。戦略は変化するとしても、企業文化や会社の使命は息の長いものであるべきだと思う。使命感に牽引された企業文化があれば、社員は会社という場を活用して、みずからの大志や情熱を実現できる」
マイクロソフトはこの点を重視し、1万8000人のリーダーたちに、部下のエンゲージメントを高めるために有効なツールとプロセスを提供している。