起業の男女格差

 グローバル・アントレプレナーシップ・モニター(GEM)の2014~16年のデータをもとに、起業活動と事業継続の確率を100ヵ国で男女別に計算したところ、次のようなことがわかった。

・6つの地域で、労働年齢の男性が新しい事業を始める割合は、労働年齢の女性より約4~6ポイント高い。
・ベトナム、メキシコ、インドネシア、フィリピンの4ヵ国は、世界的な流れに逆行している。これら4ヵ国では2016年に、起業した女性が男性より多かった。
・100ヵ国のうち50ヵ国で、スタートアップ創業の男女差(起業した男性の割合と女性の割合の差)は、2014年から16年にかけて縮小している。特に大きく縮まっているのは、トルコ、韓国、スロバキアだ。
・ただし、40ヵ国では、特にスイス、ウルグアイ、南アフリカでは、男女差が広がっている。

 スタートアップの起業に関する男女格差は大半の国で共通して見られるが、長期的な事業の成功に関する差は地域によって異なる。

 北米を除くすべての地域で、女性が率いる企業は男性が率いる企業より、持続性のレベルが低い。たとえば、中東と北アフリカでは、創業から3年半後に存続している確率は、女性が率いる企業は男性が率いる企業の50%しかない。ただし、中南米では82%にのぼる。

男女格差の原動力

 このような男女格差には数多くの理由が考えられる。その一つが経済的支援へのアクセスの差だ。

 米国を拠点とする世界的なアクセラレーターのネットワーク、マス・チャレンジの2018年のデータをBCGが分析したところ、女性が創業者または共同創業者である企業への投資額は平均93万5000ドルで、男性起業家の企業の平均210万ドルの半分にも届かない。パフォーマンスの実績があるにもかかわらず、このような格差が存在するのだ。女性が創業者または共同創業者の企業は、5年間の累積収益が73万ドルで、男性起業家の企業の66万2000ドルより約10%多い。

 こうした資金面の問題はすでに指摘されてきたが、私たちはもう一つ、過小評価されている問題に注目した──強固なサポートのネットワークという「社会資本」へのアクセスが、女性は比較的制限されているのだ。

 ここでも、小規模なビジネスの成功にとって、ネットワークは重要な要素になっている。たとえば、低~中所得の国で、少なくとも一人の起業家を知っていること(起業家のネットワークに近いと言えるだろう)が、女性が率いる企業にどのような影響を与えるかを私たちは調べた。その結果、より強固で広いネットワークの存在は、事業の持続性と、さまざまな資金源へのアクセスに関する男女格差の改善と、関連性があることがわかった。

 アジア財団などほかのグループの研究によると、1対1のネットワークは、女性が自分のビジネスに対してより高い志を持ち、成長のための計画を立てて、イノベーションを歓迎するように後押しする。