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米国HBR編集部が発行するニュースレター「Management Tip of the Day」を振り返り、2019年掲載の記事の中から編集部が厳選した10本を紹介する。


 ●「やることリスト」だけではだめ――タスクをタイムボクシングする

 長々とした「やることリスト」を抱えるより悪いのは、どうやってそれら全部をこなすべきかわからないことである。それには「タイムボクシング」が役立つ。これはリストの項目をカレンダーの時間枠に置き換える手法で、何をいつやるか計画を立てるためのものだ。

 まず自分の「やることリスト」を眺め、それぞれのタスクの締切を考える。たとえば、プロモーション映像を火曜日にライブ配信しなければならないとわかっていて、制作チームが必要な編集を加えるのに72時間必要なら、火曜日の最低72時間前の時間帯を押さえなければならない。「やることリスト」のそれぞれの項目について、これと同じことを繰り返す。

 お互いのカレンダーが見えるようにチームで共有しているなら、タイムボクシングにはさらなる利点がある。チームのメンバーに、当該の業務を締切までに終わらせなくてはならないと知らせることができるのだ。

 ただし、タイムボクシングの最大の利点は、自分自身で日程をコントロールできているという感覚かもしれない――これにより、職場での幸福感を高めることができる。

邦訳:マーク・ザオ=サンダーズ「『タイムボクシング』を実践して生産性を向上させる」


 ●クリティカル・シンキングのスキルを磨く3つの秘訣

 よい決断を下すためには、批判的に考えることが重要である。にもかかわらず、最初に提案された解決案に飛びついたり、あらゆる角度から評価する時間を取ろうとしなかったりするビジネスリーダーが、あまりに多い。このような過ちを犯さないために、クリティカル・シンキング(批判的思考)のスキルを磨くことは可能である。

 第1は、前提を疑うこと。利害が大きいときには、特にこれをすべきである。たとえば、新しい企業戦略を思いついた場合、次のように自問してみる。なぜこれが進むべき最善の道だと言えるのか。あなたの立てた市場予測を支える研究報告はあるか。

 第2に、その論理が正しいかを検証してみること。それぞれの主張を評価する際、根拠が正しく組み合わさって、健全な結論を生み出しているかどうかを考える。主張の一つひとつの点について、裏づける根拠があるだろうか。

 第3に、斬新な視点を探し出すこと。こうした問題を熟考するのに、内輪にいる人たちを頼りたくなるが、彼らが自分と同じような視点で物事を考えるならば、それは生産的ではない。狭い枠から踏み出し、自分とは異なる多様な人たちに問いかけることで、みずからの理論に挑んでみよう。

邦訳:ヘレン・リー・ブイグ「クリティカル・シンキングを磨く3つの基本的習慣」


 ●説得力あるプレゼンテーションのためのアドバイス

 職場やプレゼンテーションの場でアイデアを売り込まなくてはいけないとき、どうすればいいか。次に挙げる5つのスキルが役に立つだろう。これらはアリストテレスが2000年以上前に体系化し、いまでも説得の達人たちが使っているものだ。

・エートス/人柄:みずからの人となりを伝え、自分に対する信頼感を確立するところから話を始める。ほかの人々の幸福を大切にしていることを伝えるだけで、聴衆の信頼を得られる。

・ロゴス/理性:データや証拠、事実に基づいて、売り込むアイデアを裏づける。

・パトス/感情:人は、話し手が自分たちにどのような感情を抱かせるかによって、行動しようという気持ちになる。重要なアイデアを、ストーリーでくるむことだ。

・メタファー:自分のアイデアを聴衆が知っているものと比較する。抽象的なものを具体的なものにすれば、あなたのアイデアを明確にするのに役立つ。

・簡潔さ:自分のアイデアを可能な限り少ない言葉で説明する。人々の集中力が持続する時間には限りがあり、最も強調したい要点から始める。

邦訳:カーマイン・ガロ「説得力は2000年前から不変のスキルである」


 ●過去の失敗を引きずっていないだろうか?

 職場でミスを犯したとき、頭の中で何日あるいは何週間も繰り返してはいないだろうか。このように何度も同じことを思い出して考えることとは「反芻」と呼ばれ、深刻な不安障害をもたらすことさえある。この悪循環を打ち破るための方法がいくつかある。

 まず、自分反芻の引き金が何かを特定する。特定のタイプの人やプロジェクト、あるいは意思決定がきっかけになって、自己批判してしまうのか。いつ、そしてなぜ、ある状況が繰り返し考え始める原因になっているのかを意識する。

 ネガティブな発想を「思考」や「感情」としてラベリングし、それらと距離を置くことも有益だ。たとえば「私は力不足だ」と言う代わりに、「私は自分のことを力不足だと感じている」と言う。このような捉え方をすると、自分がいま経験していることと、人間としての、あるいは従業員としての本来の自分を区別するのに役立つ。

 反芻をやめる別の方法は、自分の気を逸らすことである。頭の中で考えがぐるぐる回って止まらないときは、散歩に出かけたり、瞑想をしたり、経費精算書を書いたりする。数分間集中できる、シンプルなことを何でもやってみるのがよい。

邦訳:アリス・ボーイズ「過去の失敗で自分を責め続けるのをやめる方法」


 ●マネジャーが話すのをやめて、人の話に耳を傾けるべきとき

 あなたはマネジャーとして、たくさんの話をしなければならないだろう。もちろん、部下が必要としているならガイダンスや指示を与えたいし、自分の考えていることを話さなければならない状況は数多くある。

 しかし多くを語ると、ある時点からコミュニケーション過剰になる。上司の話が会話のほとんどを占めると、部下の見解を聞くことができなくなる。自分が話しすぎないように、自分で話すのと同じくらい耳を傾けるべきだ。

 ミーティングで質問を受けたときには、自分が話す前に他のメンバーに議論に加わるように促そう。実際、他のメンバーが何人か意見を述べるまで、自分の考えは言わないほうがよい。こうすれば全員が参加して、自分の意見が尊重されたと感じられる。

 また、チームのメンバーと1対1のミーティングを定期的に行って、オープンなコミュニケーションを促すこと。部下は何をしたいのか、何が必要なのか、何を懸念しているのかを尋ねる。そして、口を閉じよう。自分が黙ると、どれほど多くのことを学べるのか驚くはずだ。

邦訳:ヒャルマル・ギスラソン「話しすぎる上司にならないための4つのルール」