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よりよい意思決定を下すための研究はいくつもあるが、そのほとんどが個人の問題に焦点を当てている。だが往々にして、組織における決断は一人で下すものではない。意思決定者本人が抱える課題を解決するだけなく、組織のガバナンスシステムから改革する必要がある。本稿では、そのための4つのステップを示す。


 意思決定に関する研究は大量にあるが、多くのリーダーや企業にとって、意思決定は相変わらず多大なフラストレーションの源だ。その理由は、従来の研究が意思決定を下す人に照準を合わせ、個人のバイアスや不安、本能を検証しているからかもしれない。

 しかし、組織において、意思決定はむしろ分散型の能力だ。さまざまな部門や地域が絡み合った広大なネットワークの至る所で、同時に無数の選択が行われている。優先順位を決めて、資源を割り当て、雇用や解雇をし、危機を解消する──リスクの高い戦略な決断からリスクの低い戦術的な問題まで、さまざまな意思決定が行われているのだ。

 この文脈でガバナンスのあり方について語られることはめったにないが、企業内の大規模な意思決定プロセスを動かすのは、基本的に組織のガバナンスである。問題は、組織のシステムの大部分が計画的につくられたものではなく、放置された庭の雑草のように、急速に増殖した結果であるということだ。

 マッキンゼーが2200人以上のエグゼクティブを対象に行った調査では、企業のリーダーの72%が、自分たちの組織において、悪い戦略的決断はよい決断と同じくらい頻繁に、当たり前のように行われていると考えている。

 その結果、次のようなことが起きる。

・焦点が定まらない会議:効率的な会議は、真摯な対話を促進して、賢明な選択を導く。それに対し、焦点が定まらない会議は、冗長で無関係な近況報告と化し、不誠実なやり取りが効率的な意思決定を阻んで、すでに混乱しているガバナンスシステムをさらに悪化させかねない。

・決定権をめぐる混乱:ガバナンスがうまく機能しないと、誰がどんな責任を負うのかという混乱が深まり、部門同士やチーム内で無益な主導権争いが生じる。

・矛盾する優先順位:集中すべき問題が整理されていない組織は、優先順位が混乱している、常に変わるといった不満が多い。

・無意味なタスクフォースと諮問委員会:ガバナンスが適切に運営されていないと、論理的な根拠がなくなってもだらだらと議論を続け、誰も関心を持たない活動や報告書を生み続ける。

 このような症状はわかりやすいが、貧弱なガバナンスシステムがもたらした結果としてではなく、個々の問題として対処していると、目の前にある本当の問題を解決できない。

 幸い、社内全体の意思決定を同期させるようなシステムの設計に必要なステップはシンプルで、従業員が100人の企業でも1万人の企業でも基本的に変わらない。さっそく見ていこう。