●どのように台本をつくるかを決める

 あなたの台本の内容は、生産性の専門家ティモシー・フェリスのEPEテクニック(例→重要ポイント→例)のように、いくつかの重要な論点でできているかもしれない。あるいは、ウィンストン・チャーチルの演説のように、間の取り方も含めて、あらゆる詳細を書き込んだものかもしれない。

 どの方法を選ぶかは、あなたのスピーキングのスタイルや、そのイベントにどれがふさわしいかによる。

 たとえば、双方向的なリーダーシップのクラスなら、私は中心的概念が効果的に伝わるように、10項目前後の要点を完全にマスターするだろう。枠組みの定まったワークショップなら、主な要点を順番に記憶し、参加者がロードマップを追えるようにする。大きな基調講演では、一字一句正確に暗記することまではしないものの、スピーチの全文を書き出して、徹底的にリハーサルをする。

 ●セクションに分ける

 話す時間の長短にかかわらず、スピーチはいくつかのセクションに分割しよう。30分のスピーチなら、2~3つのパラグラフに分けるといい。私はスピーチの全文を書く場合でも、各セクションの概要を箇条書きにしたリストをつくる。

 次に、個々のセクションに取り組もう。私は台本を暗記するときには、順序に従ってセクションをマスターすることが多いが、あなたにとって納得できる覚え方をしてほしい。

 その後、セクションからセクションへの移行を練習する。特に移行の部分は意外な落とし穴が潜むので、つまずきそうな部分に注意を払い、何度も練習してから次に進もう。

 ●時間をかけて台本を習得する

 あなたの台本がごく簡潔なものでも(箇条書きのリスト)、びっしり詰まったものでも(全文の原稿)、完全に吸収するために要する時間を過小評価してはいけない。ありがちな最大のミスは、準備の時間として前日しか確保しないことだ。大きなスピーチでは、少なくとも4週間から6週間前には、台本の中身を確定しておくべきである。

 毎日、時間をとって、スピーチの一部分を覚えよう。時間を有効利用するため、就寝前に台本の一部を読む、聞く、あるいは歯を磨きながら覚えてもいい。自分のスピーチを録音して、車を運転しているとき、運動しているとき、何かの用事をしているときに(安全に気をつけながら)聞く。

 私はTEDxの台本を習得するのに200時間費やしたが、その大半は車中だった。そして、暗記に集中できるときは、ずっとよくはかどった。

 ●初めから終わりまでのリハーサルでは足りない

 ほとんどの人は、練習を出だしから始めるので、台本の覚え方にむらができる。導入部分はしっかりしているのに結びはガタガタというのが、よくあるパターンだ。

 台本を順番通りに覚えるのではなく、練習では任意のセクションから始めて、そこから最後までやってみよう。その後で、全体を1つにまとめる。動作も、言葉を記憶に刻むのに役立つ。立ってトークをするつもりなら、座ってリハーサルしたり暗記したりしないほうがいい。私はよく小さなステージを線で引いて、本番のスピーチのときのように、そこを歩き回る。

 スピーチのセクションと、ステージのある場所を関連づけることも、記憶の助けになる。本番とまったく同じ服装と靴でスピーチを練習するのも効果的だ。スピーチの最中に、服の着心地のよくない場所をいじっていたら、あなたも聴衆も気が散るだろう。

 ●万が一、忘れたときのプランを用意する

 度忘れをしたら、即興で切り抜けようとしないほうがいい。対処法を準備段階で考えておこう。使えそうなフレーズを2つか3つ用意しておくといい。お決まりのフレーズがあるとわかっていれば、忘れることへの緊張も和らぐ。

 たとえば、「ちょっとメモを参照しますね」「次の要点を何とか思い出そうとしています。ちょっと考える時間をいただけますか」など。単に水をひと口、飲むことにするのでもいい。

 聴衆は理解を示し、あなたの正直な態度を気持ちよく思うだろう。パニックに陥ったり、何も問題はないと繕ったりしないほうが、聴衆もささいな過ちと受け止めやすく、それほど気まずい雰囲気にはならないはずだ。

 台本を知り尽くすことは、いろいろな形で現れる。最重要点を明確に理解し、聴衆からどんな巧妙な質問をされても頭が真っ白にならないこともそうだし、基調講演の台本を一字一句覚えていることもそうだ。台本を知り尽くしているとき、あなたは自分が伝えたいことを伝えられるだけでなく、あなたが選び、策定した最良のメッセージを聴衆に届けることができる。

 会議でスピーチするときも、チームの方向性を打ち出すときも、重要なプレゼンテーションでアイデアにゴーサインを出してくれるよう上層部を説得するときも、伝えたいことを知り尽くそう。そうすれば、大切な瞬間を自分のものにできる。


HBR.org原文:Don't Just Memorize Your Next Presentation - Know It Cold, February 07, 2020.


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