読書に投資する

 CEOたちは、文学作品を読んで話し合うためのファシリテーターがいる会合に参加するための時間やお金、エネルギーを投資することに、気が進まないかもしれない。しかし初期研究によると、インストラクターが進行する読書会は役に立つことが示唆されている。

 工業製品を製造するエンプロ・インダストリーズの社長兼CEOのマービン・ライリーは、自社の「ダブル・ボトムライン文化」を強化する方法を探していた。ライリーは「心理的安全性を確立し、協働を実践し、アイデア第一主義を受け入れ、クリティカル・シンキングを行い、それに何よりも、高いパーソナル・エンゲージメントを築くこと」を望んでいた。

 ライリーはBooks@Workに打診して、1回につき20人までの参加者とセッションを数回行った。参加者は短編や小説を読んだ後、ファシリテーターのもとで、それらについて勤務時間中に話し合った。このプログラムのおかげで、作業チームの率直さや共通言語を使って効果的にコミュニケーションする一般能力が増したと、ライリーは評価している。

 ファシリテーターが進める読書会を、職場でのトレーニングや養成プログラムに取り込むと従業員にどんな影響を及ぼすのかに焦点を当てた、学術データはない。しかし、読書に関する研究によると、文学を読むことは共感力やクリティカル・シンキング、創造力を養うのに最適な方法の一つである。

 認知科学者であり、『デジタルで読む脳 X紙の本で読む脳』の著者であるメアリアン・ウルフは、「読書の質」は「思考の質の指標」だと主張する。より優れた思想家がビジネスの世界で必要ならば、より優れた読書家を育てるべきなのだ。


HBR.org原文:The Case for Reading Fiction, March 06, 2020.


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