なぜ読書で成果が出るのか
研究によると、文学作品を読むことは、情報を処理する際、脳が先入観を抱かないようにする能力を高めるのに有効な方法である。これは、効果的に意思決定するために必要なスキルだ。
研究者たちは2013年、認知的完結欲求と呼ばれるもの、つまり「意思決定をするときに、すぐに結論を出したいという欲求で、あいまいさや混乱への嫌気」について調べた。
認知的完結欲求の高い人は、「情報に関して早期に出てくる手がかり」に依拠することが多い。そのため新しい情報が入ってきても、考えをなかなか変えられない。また、代替的な説明として思いつく仮説の数が少ないため、自分の最初の(なおかつ不備があるかもしれない)所信に対して、強い自信を持てる。
認知的完結欲求の高い人は、わずかな情報や少数の観点に自然に引きつけられる人でもある。かたや認知的完結欲求に抵抗する人は、より思慮深く創造的で、ストーリーが相反していても苦痛を感じずにいられる。これらはすべて、EQが高い人の特徴である。
トロント大学の研究者たちは、被験者のうちで短編(随筆ではなく)を読む人は、認知的完結欲求が低いことを発見した。この結論は驚きに値しない。文学作品を読むためには、落ち着いて大量の情報を吸収し、読み進めるにつれて考えを変えることが求められるからである。
文学に簡単な答えはない。読み手にできるのは、視点を受け入れることのみである。読者としての我々は、ほとんど確実に『ロリータ』の語り手であるハンバート・ハンバートを不愉快だと感じるだろうが、彼の考え方を経験することを強いられる。これは、認知的完結欲求を下げるのに有益な訓練である。
さらに、他人の行動について話しているときなら、私たちは自己防衛をしなければという思いにかられずに済むと、指摘する研究もある。他のコンテクストでは交わさないような会話、少なくとも同じような正直さをもってはできないような会話をすることが、可能になるのだ。





