第1の研究では、脈絡のない7つの単語(yellow、imagine、beautifulなど)を複数の人が読み上げた音声クリップを参加者に聞かせ、それぞれの話者が4年制大学を卒業しているかどうかを当ててもらった。参加者は話者の学歴を55%の確率で正しく言い当てており、正答率は、まぐれ当たりよりも有意に高かった。

 続く研究では、話者が自分について語った75秒間の録音を参加者に聞かせて、話者の学歴、職業、収入などの社会的地位を評価してもらった。参加者はわずか30秒で、話者の実際の社会的地位を突き止めていた。

 参加者が話者の話を耳で聞くのではなく原稿で読んだ場合は、そこまで迅速かつ正確な評価はできなかった。したがって、第一印象は、話の内容よりも話し方に影響されると考えられる。

 3番目の研究では、採用者としての経験を持つ274人に、ラボマネジャー職の応募者による25秒間の会話のサンプルを聞いてもらった。他の実験と同様、参加者は話者の社会経済的地位を正確に認識した。

 衝撃的だったのは、社会経済的地位の低い人は地位の高い人よりも、能力が低く、職の適性に乏しく、初任給や契約金は安くてよいと参加者が判断していたことだ。応募者の資質についての情報をいっさい知らないまま、そう判断していたのである。

 わずか25秒の何気ない会話が採用の決定にこのような形で先入観を与えるという研究結果に、あらためて現実を突きつけられる。企業で当たり前のように行われていることが、社会的不平等を再生産しているのである。

 実際、履歴書を読み解き、求職者との面接の経験を積んできた人でさえ、直感的に、仕事の重要スキルの代わりに社会的階層を判断の手がかりにしている。そして、高いスキルがあっても恵まれない環境で育った人を過小評価してしまうのである。