企業は何ができるだろうか。最初に浮かぶであろう浅はかな対応は、望む仕事に就いている人々の話し方を習得するよう、求職者に示唆することである。

 だが「コードの切り替え」を求めることには、明らかに損失がともなう。自分の一面を職場で隠そうとすることで、認知資源を消耗し、健康や幸福感が低下しかねない。また少数派の従業員は自分の行動を積極的に統制するため、ダイバーシティ(多様性)、エクイティ(公平性)、インクルージョン(包摂)を目指す企業が、その目標を達成することができなくなる。

 企業の解決策としてもう一つ考えられるのは、先入観を排除するために、採用のプロセスに自動化や機械学習を取り入れることである。だがアルゴリズムによる意思決定でも、やはり、どのデータを使用するか、どの特徴を重視するかを決めるのは人間である。

 私たちが提唱するのは、第3の解決策である。採用の決定において、人種と社会経済的地位が多様な労働力の創出を重視し、奨励する姿勢を確実にすることである。

 企業がそのように転換することによって、社会経済的地位の低い候補者に的を絞った大卒求人、家族で初めての大卒者となった従業員のための指導教育プログラム、企業の多様性プログラムに沿った説明責任のチェックなどを実践できるようになるだろう。

 私たちの研究は、社会経済的地位の高い求職者の採用に有利に働き、かつ迅速でやっかいな心理的プロセスを明らかにした。だが、これは克服できるものである。そのためには、必要なすべてのスキルを備えながらも、採用側の人々と外見や話し方があまり似ていない求職者を積極的に受け入れることが大切である。


HBR.org原文:Research: How Speech Patterns Lead to Hiring Bias, March 13, 2020.


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