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新型コロナウイルス感染症の拡大により、世界中の大学がリモート教育に移行している。従来の常識を覆すこの壮大な実験は、大学教育に何をもたらすのか。筆者らは、それを検証するために3つの問いを立てて、データを集める必要があると主張する。


 想定外の出来事に突き動かされて、新しいアイデアが大々的に実験されたとき、社会とビジネスのあり方に地殻変動が起きる。

 たとえば、第二次世界大戦期の米国では、男性が戦場に向かったため、女性がそれまで「男の仕事」と思われていた仕事を担うようになり、それを見事にやり遂げられることを実証した。戦争が終わっても、米国の女性たちが以前の役割に戻ることは二度となかった。

 コンピュータの西暦2000年問題が浮上したときは、その問題に対処するために、米国でインド人ソフトウェアエンジニアに対する需要が大幅に高まり、その結果として、米国が発給する就労ビザの件数が3倍に増加した。

 2000年問題への対処で能力を実証したインド人エンジニアたちは、テクノロジー分野で世界の頂点に立つようになった。現在、アルファベット(グーグルなどを傘下に収める持株会社)、マイクロソフト、IBM、アドビシステムズは、いずれもインド出身のエンジニアに率いられている。

 いま新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行により、世界規模でリモート教育の実験が始まっている。さまざまな指標に照らすと、今回の危機は、私たちの生活の多くの側面を変えつつあるようだ。リモート教育が成功すれば、教育もそのような分野の一つになる可能性がある。

 では、リモート教育は大学教育のあり方として定着するのか。それを知るためには、新しい実験を行う中で、大学教育のビジネスモデルと、良質な大学教育へのアクセスのしやすさに関して、以下の3つの問いに注意を払い、データを集める必要がある。