人:自分のチームのレジリエンス要因を知る
その人がレジリエンスを持つかどうかは、心理学者が3つの「予防要因または促進要因」と呼ぶものから予測できる。それは、自分の能力に対する大きな自信、仕事における規律正しい習慣、そして社会と家族のサポートだ。
理想は、チームのメンバーがこれら3つ(特に自信と規律)をどの程度持っているかを、あなたがリーダーとして把握していることだ。だが、今回のような危機では、その一部が揺らぐ恐れがある。
リーダーが最初にできることの一つは、「レジリエンスの在庫ダッシュボード」とも呼ぶべきものを確立しておくことだ。すなわち、部下に直接連絡を取り、テレコミュニケーションが苦にならないか、仕事の日はどのようにスケジュールを立てているのか、そして生活あるいは家族に関して自分にサポートできることはないかなどを、個人的に尋ねる。
ある法律事務所のマネージングパートナーは最近、所属弁護士一人ひとりに現在の状況を聞き、特に高齢者や高リスク者のケアをする責任はないかを尋ねた。そのうえで、それぞれが仕事と日常生活で参ってしまわないように、担当案件とパラリーガルのサポートを調整した。
あなたの部下たちは、多くの新しいチャレンジに直面して、自信が揺らいでいるかもしれない。しかし、あなたが信頼していることを積極的に示せば、その自信を深めてやることができる。
ある機械技師の女性は、自分がテレワークに適応できるかを疑問に感じていた。しかし、マネジャーが「私は君の決断と、これまでの仕事を尊敬している」と言ってくれたおかげで、自信を持ち続けることができたという。そのマネジャーは、何かミスをしても、それを改善の材料にすればいいとも言ってくれた。
自宅で仕事をするためには、おそらく新しい習慣づくりをするとともに、部下たちの集中力をテストする必要があるだろう。部下たちが新しい仕事のやり方に適応するのを、どうすれば助けられるかを考えよう。
ある融資事務担当マネジャーは、部下たちがリモートワークに慣れる中、品質チェックの頻度を上げさせた。そんな細かいことまで、と思うかもしれない。だが、おかげでそのチームは、極度のプレッシャーの中でも「スピードを落として、慌てずに」仕事をこなすことができたという。リーダーは、一種の時間割をつくるなど、部下たちが仕事における規律正しい習慣を維持し、生産性を高める戦略をとることができるだろう。
思いやりを示すことも、チームを強化する助けになる。思いやりのあるマネジャーは、部下たちのために自分の時間を割き、気遣いを示し、部下が自宅作業に必要なオフィス用品を入手できるよう助け、糖尿病などの既往症がある高リスク従業員に特別な配慮をする。特に重要なのは、部下を従業員としてだけでなく、人として心から気にかけていることを示すことだ。
ある大手石油・ガス企業のマネジャーは、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)対策として、組織的な在宅勤務の命令が下される以前から、自分のチームのリモートワークを認めるよう会社の上層部に掛け合い、その移行プランを部下一人ひとりと話し合った。そのうちの一人は、そうしたマネジャーの行動のおかげで、「自分が会社に貢献する重要なメンバーなのだ」と実感できたと語っている。
あなたの部下たちが、レジリエンス検査で高得点をマークしたら、それは結構なことだ。しかし、だからといって、彼らが危険と無縁というわけではない。
レジリエンスが高い人は行動指向で、物事をコントロールしたがり、その結果「パニック」に陥ったり、危機のときに燃え尽きたりする恐れがある。部下たちのレジリエンスを維持する措置も必要になるだろう。彼らのエネルギーを戦略的イニシアティブに向けさせよう。