人: レジリエンス指向の会話を促す

 職場でレジリエンスを高める最も効果的な方法が、一人ひとりにカスタマイズされたインディビジュアル・コーチングであることは、多くの研究が示している。筆者らが2015年に、米国海軍の新兵約400人を対象に行ったフィールド実験の結果も、そのことを示していた。

 実験ではまず、海軍のブートキャンプ(新兵訓練キャンプ)の最初に、新兵たちに自分のレジリエンスを自己採点してもらった。次に、キャンプの半ばに、対象者の半分には1対1のピア・コーチングに参加してもらい、残りの半分には何もやらないでもらった。

 ピア・コーチングは「誘導会話(guided conversation)」のスタイルで、自分のポジティブな経験や、課題とそれへの対処法、さらには海軍兵としての自分の未来像を語ってもらう。このようなセッションに参加した新兵は、レジリエンスが20%も増加した一方で、対照群の変化は1%未満だった。

 マネジャーが部下の一人ひとりと誘導会話をすることもできる。ただ、それでは時間がかかるし、部下と対等な関係ではないことが会話の内容に影響を与えるかもしれない。筆者らが、仲間同士の定期的な誘導会話を奨励するのはそのためだ。

 あなたがマネジャーとして、誰と誰がペアを組むかだったり、ビデオチャットのスケジュールを指定したりすることもできる。海軍の新兵たちと同じように、あなたのチームメンバーにも成功経験や、課題とそれへの対処法、それに今回の危機で学んだことの中で、事態が正常化したときに応用できそうなことを話し合ってもらってもよいだろう。

 この最後のステップは不可欠だ。事態がいずれ安定化すると思い出させること、そして、この苦しい状況が終わったら自分はどのような人間になっていたいのかを展望することは重要である。