視点:学習の機会を見つける
筆者らは2015年、前述の実験とは別に、米国海軍の新兵約200人を対象とした長期にわたる研究を行った。そして、自分の中でうまくいかなかった経験を、失敗ではなく学習の機会ととらえるやり方も、レジリエンスの強化につながることを発見した。
アクセンチュアの経営幹部ロバート J. トーマスは著書Crucibles of Leadership(未訳)で、「緊張の再構成」というアプローチを紹介している。困難「にもかかわらず」ではなく、困難「の中にある」学習機会に注目しろ、というのだ。
それはいま、多くの大学教授たちがやっていることでもある。彼らは教室で授業を行う機会を否定され、急速にオンライン授業やオンライン学習のエキスパートになりつつある。この危機が終わったら、大学は、質の高い学位取得課程を全面的にオンラインで提供する準備が整っているのか。そんなことが可能なのだろうか。
リーダーは部下たちに、この危機で役に立つ特別な才能やスキルを持っていると気づかせることもできる。
たとえば、あなたのチームがリモートワークに移行することになったとき、集中力を維持するのが特に上手なメンバーはいないだろうか。その人物に、バーチャル研修をやってもらってもよいだろう。自分のスキルがチームに役に立つことを実感できれば、チームの自信と社会的なサポートが大きくなるはずだ。
レジリエンスを持つチームは、この新しい協力関係の中で、物事への対処法をその場で考えることを学習するだろう。これには継続的な調整が必要なので、リーダーであるあなたは、アジャイル・プロセスの手法を借りて、毎日「立ったまま行うミーティング(スタンドアップ・ミーティング)」のバーチャル版を開くとよいだろう。
タスクだけでなく、人間関係に注目することも重要だ。スタンドアップ・ミーティングを利用して、チームがつながっている感覚を高めよう。
たとえば、ハンド・オフ(手渡す、引き継ぐ)についてどう思うか、あるいは落ちこぼれないためにはどうしたらいいか、といったアイデアを共有するのもよい。うまくいっていることや、改善できるプロセスを話し合ってもよいだろう。
困難に直面したとき、チームが何を学んでいるかに注目すると、重要な3つの予防要因(自分の能力に対する自信、規律正しい習慣、社会と家族のサポート)のすべてに関して、チームを強化できるだろう。
危機は、あなたの部下たちのレジリエンスを高めるチャンスでもある。本稿で提案した戦術を上手に実践すれば、彼らは困難から立ち直るだけでなく、人としても、チームとしても、もっと強くなるはずだ。
HBR.org原文:Build Your Team's Resilience - From Home, April 14, 2020.
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