率直になり、弱さを見せる

 誰にでも、うまくかないとき、うまくいかない日、うまくいかない週はある。苦労していることを見せてもいいのだ。私は数年前に、優れたリーダーは感情的になるという記事を書いたが、いまほどそれが当てはまるときはない。

 新型コロナウイルスの影響によりほとんどの市場で収益が75%近く減少した、ホテル大手マリオット・インターナショナルのアーン・ソレンソンCEOは、従業員にビデオメッセージを送ろうと考えた。しかし部下は、彼の外見を理由に反対した。膵臓(すいぞう)がんの治療を受けていたソレンソンは、化学療法によって髪の毛が抜け落ちていたのだ。

 それでも、ソレンソンはビデオを撮影した。その中で彼は、同社の会長とともに自身の2020年の給与を返上し、経営陣の報酬を半減すると発表した。最後には、世界中のマリオットの従業員を支援すると、声を詰まらせながら語った。このビデオをきっかけに、他の企業のリーダーらも給与の返上を決めた

 決済代行会社グラビティ・ペイメンツを率いるダン・プライスCEOも、寛容さと弱さを見せた。同社の月間収益は、新型コロナウイルスのパンデミックによって半減していた。

 プライスは数ヵ月で会社が破綻すると予測した。レイオフは避けたいが、厳しい財政状況に直面していた彼は、従業員と現状を共有し、今後の進め方について彼らの意見を聞くことにした。

 プライスはCOO(最高執行責任者)とともに、小規模な従業員のグループと4日間にわたって40時間のミーティングを行った。「すべてをさらけ出した」とプライスは言う。「そして、耳を傾けた」

 ミーティングの後、経営陣はレイオフではなく給与の減額を決めたが、重要なアイデアを盛り込んだ。全員の給与を一律の割合で減らすのではなく、従業員一人ひとりに対し、どれだけの減額に耐えられるかを個別に伝えるよう求めたのだ。

 この戦略が成功したのは、プライスが強固な信頼の文化を築いていたからだ。「CEOの皆さん、解雇する前に従業員と話すことを検討してください」と、プライスはツイッターに投稿した

「我々は400万ドルの月間収益の半分を失い、4~6ヵ月で破綻するところでした。従業員にこのことを伝えると、彼らは賃金カットを申し出てくれ、それによってレイオフをすることなく、8~12ヵ月乗り切ることができます」