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世界が新型コロナウイルス感染症の大流行を経験する中、誰もが元の暮らしに戻る日を夢見ている。パニック映画に登場するヒーローさながら、起死回生の解決策を待ち望む気持ちは理解できる。だが、現実の社会で大きな問題が解決を迎えるとき、それは多くの場合、小さな解決策を積み重ねることで実現すると筆者は指摘する。


 パニック映画にはたいてい、主人公が起死回生の行動を取り、絶望的な状況を勝利に変える瞬間がある。いま、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の大流行というパニック映画さながらの現実を経験している私たちも、一発大逆転の解決策が見つかって、元通りの生活に戻れる日が来ることを期待している。

 具体的には、完全に有効なワクチンや治療薬が開発されることが、元の暮らしに戻るための前提だと、専門家たちは口々に指摘する。しかし、残念ながら、いずれもすぐには開発されそうにない。

 そこで、ワクチンや治療薬の開発で奇跡が起きるまでは、徹底した検査と接触者追跡の体制を確立することが、経済生活と社会生活に対する厳しい制約を解除する条件だと、専門家たちは言う。

 このように、ある一つの対策の成否にすべてがかかっているという発想は、映画のストーリーとしては魅力的かもしれない。だが、社会やビジネス、科学の世界で実際に大きな問題が解決されるときは、往々にして、そうしたプロセスをたどらない。

 大きな問題はしばしば、小さな解決策の積み重ねにより解決される。小さな解決策の一つひとつはそれほど効果が大きいように思えないかもしれないが、すべてが合わさると途方もなく大きな効果を持つのだ。